春の柔らかな日差しが差し込む土曜日の朝、わたしは久しぶりに家族全員でリビングでくつろいでいました。3歳の娘は床に座り、色とりどりのクレヨンで絵を描いています。そして、その横で大きな体を丸めて眠っているのは、私たちの家族の一員となって2年になるハスキー犬のルナです。
最初にルナを迎えることを決めた時、正直不安でいっぱいでした。ハスキー犬といえば、そりを引く working dog。活発で扱いが難しいという噂を耳にしていたからです。特に小さな子供がいる我が家で、大型犬を飼うことに対して、周りからは心配の声も上がりました。
でも、ブリーダーさんの所でルナと出会った瞬間、そんな不安は氷解しました。人懐っこい青い瞳で、尻尾を振りながら寄ってきたルナの姿に、家族全員が一目惚れしたのです。確かにハスキーは活発な犬種です。でも、適度な運動と愛情を与えれば、驚くほど穏やかで賢い犬になることを、ルナは私たちに教えてくれました。
毎朝の散歩は、今では欠かせない日課となっています。主人が仕事に出かける前の早朝、まだ街が目覚める前の静かな時間に、ルナと一緒に近所の公園まで足を伸ばします。時には小雨が降っていても、ルナは嬉しそうに尻尾を振って玄関で待っています。ハスキーは本来、寒冷地で活躍する犬種。少しぐらいの雨は、むしろ心地よいようです。
特に印象的なのは、娘とルナの関係です。最初は大きな体格に怯えていた娘も、今ではルナの背中に寄りかかって本を読んだり、一緒におもちゃで遊んだりするようになりました。ハスキーは見た目の印象とは裏腹に、子供に対してとても優しい犬種なのです。ルナは娘の動きを常に見守り、時には遊び相手になり、時には慰め役になってくれます。
確かに、ハスキーならではの特徴もあります。抜け毛の多さには驚きました。換毛期には毎日掃除機をかけても、まるで雪が降ったかのように白い毛が舞い散ります。でも、定期的なブラッシングを習慣づければ、それほど大変ではありません。むしろ、ブラッシングの時間は、ルナとスキンシップを深める大切な機会となっています。
また、ハスキーの特徴的な「歌声」も、今では家族の日常の一部です。嬉しい時や甘えたい時に発する独特の鳴き声は、最初は驚きましたが、今では「ルナの会話」として家族の笑いを誘います。特に娘は、ルナの歌声に合わせて踊ったり、真似をしたりして楽しんでいます。
休日には家族でドッグランに出かけることも増えました。広い空間で思い切り走り回るルナの姿は、まさに生き生きとしています。他の犬たちとも上手に遊び、時には小さな犬にも優しく接する姿を見ると、その賢さと思いやりの心に感心させられます。
食事の時間も、家族の大切な団らんの時です。ルナは自分の食事の時間を心得ていて、決して人の食事に手を出すことはありません。むしろ、家族が食事を終えるまで、静かに待っていてくれます。このような基本的なしつけは、幼い頃からの一貫した教育の成果ですが、ハスキーの賢さがあってこそだと感じています。
夜になると、リビングのソファの前で寝そべるのがルナのお気に入りの場所です。テレビを見ている家族の傍らで、時々まどろむような表情を見せながら、でも常に家族の存在を感じているかのように、耳をピクピクと動かしています。
そんなある日、娘が熱を出して寝込んだことがありました。その時、ルナは娘の部屋の前から一歩も動こうとしませんでした。時々そっと部屋に入っては、娘の様子を確認し、また戻っていく。その献身的な姿に、私たち夫婦は深く心を打たれました。
ハスキー犬は確かに、一般的な家庭犬とは少し違う特徴を持っています。でも、その特徴を理解し、適切な環境と愛情を与えれば、これ以上ない素晴らしい家族の一員となってくれます。活発さの中にある穏やかさ、賢さの中にある優しさ、そして何より、無条件の愛情を与えてくれる存在。
今では、ルナがいない生活は想像もできません。朝の散歩も、夜の団らんも、休日の外出も、すべてルナありきの生活が当たり前になっています。そして何より、娘が「ルナは私の大切な家族」と誇らしげに友達に話す姿を見るたびに、あの日ルナを迎える決断をして本当に良かったと感じています。
ハスキー犬との生活は、確かに少しの覚悟と準備が必要かもしれません。でも、その見返りとして得られる喜びと幸せは、想像をはるかに超えるものです。ルナが教えてくれた「本当の家族の形」は、血のつながりだけではない、心と心で結ばれた絆の大切さでした。
今日も、窓から差し込む夕陽に照らされながら、家族全員でソファに座っています。ルナは相変わらず床で丸くなり、時々尻尾を振って私たちを見上げます。その青い瞳に映る私たちの姿は、きっと「完璧な家族」なのだと思います。
コメント