ハスキーと暮らす日々──食卓の周りで学んだ、静かな気づき

育てる

ALT

ハスキー犬を家族に迎えたのは、秋口の肌寒い夕暮れ時だった。保護施設の担当者が「食事だけは本当に気をつけてあげてください」と何度も念を押していたのを覚えている。そのときはまだ、その言葉の重みを十分には理解していなかった。

最初の数日は、ただ無我夢中だった。ハスキーは想像以上に力が強く、散歩のたびに腕が引っ張られる。けれども家の中では意外なほど穏やかで、リビングの隅にある古いラグの上でよく眠っていた。私が夕食の支度をしていると、いつも台所の入り口でじっと座って待っている。その姿勢がまるで何かを見守っているようで、少し気恥ずかしくもあり、少し誇らしくもあった。

食事に関しては、最初から細心の注意を払った。ハスキーは胃腸が繊細な犬種だと聞いていたし、人間の食べ物を与えてはいけないという基本中の基本も、何度も確認していた。それでも、ある晩のこと。私が作っていた鶏肉のソテーの香りに誘われたのか、彼はいつもより前のめりになって台所に入ってきた。そして、ちょうど私が皿を取ろうとして振り返った瞬間、彼の鼻先が私の膝にぶつかった。思わずよろけて、手に持っていた木べらが床に転がる。彼はそれを見て首を傾げ、まるで「何をしているんだ、この人は」とでも言いたげな表情を浮かべていた。あのときの彼の冷静な目が、今でも忘れられない。

ハスキーとの暮らしで最も気をつけなければならないのは、やはり食事の管理だ。彼らは食欲が旺盛というわけではなく、むしろ気まぐれなほどに食べムラがある。だからこそ、毎日同じ時間に、同じ量を与えることが大切になる。私は朝と夕の二回、決まった時刻にフードを用意するようにしている。使っているのは「ノルディア・ブレンド」という北欧風のドッグフードで、これは友人に勧められたものだった。粒が大きめで、噛みごたえがあるらしい。彼はそれを一粒ずつ丁寧に噛んでいる。

食事の際には、必ず水も新鮮なものに替える。ハスキーは暑さに弱いため、水分補給は欠かせない。真夏でなくても、室温が少し高いだけで息が荒くなることがある。だから私は、冷房の設定温度にも気を配るようになった。そして食後は、最低でも三十分は休ませる。これは胃捻転を防ぐための基本だ。ハスキーのような大型犬は、食後すぐに激しく動くと命に関わることもある。

それでも、彼と過ごす時間は穏やかで満ちている。夕食を終えた後、私がソファに座って本を読んでいると、彼は足元に静かに寝そべる。ときどき、彼の深い呼吸音が聞こえてくる。それはまるで、家全体が呼吸しているような、そんな錯覚を覚えるほどだ。窓の外では、街灯が淡く灯り始め、遠くで車の走る音が微かに聞こえる。

子どもの頃、祖父の家には柴犬がいた。その犬もよく縁側で昼寝をしていて、私はその横で絵本を読んでいた記憶がある。あの頃の犬との距離感と、今のハスキーとの関係は少し違う。柴犬は愛想が良く、誰にでも尾を振っていたけれど、ハスキーはもっと静かだ。感情を表に出すのが控えめで、だからこそ、ふとした瞬間に見せる仕草がとても印象に残る。

たとえば、私がコーヒーを淹れてカップを手に取ったとき、彼がゆっくりと立ち上がって近づいてくる。そして、何も求めるわけでもなく、ただ私の隣に座る。その存在が、何かを語っているように感じられる瞬間がある。言葉はないけれど、確かに通じ合っている何かがあるのだと思う。

一緒に暮らすということは、相手のリズムを知ることだ。ハスキーには彼なりのペースがあり、それを無理に変えようとしてはいけない。食事の時間も、散歩のコースも、休む場所も、すべて彼が選んだものを尊重する。そうすることで、彼もまた私の生活に寄り添ってくれるのだと思う。

最近では、彼の表情を見ただけで、今日は食欲があるかどうかがわかるようになった。耳の角度や、尻尾の位置、目の輝き。それらすべてが、彼の体調や気持ちを教えてくれる。だから私は、毎日少しずつ観察を続けている。それは義務ではなく、むしろ楽しみに近い。

ハスキーと暮らす日々は、決して派手ではない。けれども、静かで深い充実感がある。朝の光の中で彼が伸びをする姿、夕暮れ時に窓辺で外を眺める横顔、夜にそっと寄り添ってくる温もり。それらすべてが、私の日常を豊かにしてくれている。そして、これからもきっと、彼との時間を大切に紡いでいくのだろう。
#ハスキー犬
#犬好きな人と繋がりたい
#わんこと遊ぶ
#友達と休日
#犬のいる暮らし
#ハスキーのいる生活
#犬とお出かけ
#もふもふ時間
#仲良しグループ
#癒しのひととき
#日刊ブログメーカー

コメント

タイトルとURLをコピーしました