
ハスキー犬を家族に迎えるという決断は、思っていたよりもずっと具体的で、ずっと日常的なものだった。朝の光が窓から斜めに差し込む六月の初め、私はリビングの床に座り込んで、新しく届いたステンレス製のフードボウルを眺めていた。北欧のインテリアブランド「ノルディア・ペット」のもので、深さがあって安定感のある設計だという触れ込みだった。ハスキーは食べるのが早い。そして力も強い。だから器選びひとつとっても、適当には済ませられない。
一緒に暮らすということは、つまりそういうことなのだと思う。彼らの習性や体の特性を理解し、それに合わせた環境を整えること。ハスキーは寒冷地出身の犬種であり、その厚い被毛と体のつくりは、日本の蒸し暑い夏にはあまり向いていない。エアコンの設定温度をいつもより低めにし、散歩の時間も早朝か夕暮れ以降にずらす。そんな小さな配慮の積み重ねが、彼らの健康を守る。
食事についても、気をつけるべきことは多い。ハスキー犬は運動量が多く、筋肉質な体を維持するために良質なタンパク質が欠かせない。けれど、与えすぎれば肥満のリスクがあるし、逆に足りなければ毛艶が悪くなったり、元気がなくなったりする。最初の頃、私は「これくらいでいいだろう」と目分量でフードを盛っていたのだが、ある日獣医師に指摘されて、それ以来きちんと計量カップを使うようになった。几帳面とは言えない性格だったはずなのに、不思議なものだ。
ハスキーには人間の食べ物を与えないというのも、大切なルールのひとつだ。彼らは好奇心が旺盛で、食卓に並ぶものに興味を示す。特に肉や魚の匂いには敏感で、じっと見つめてくることもある。その視線に負けて、つい一口あげたくなる気持ちもわかる。けれど、玉ねぎやチョコレート、ぶどうといった食材は犬にとって有害であり、最悪の場合命に関わる。だから、どんなに可愛い目で見つめられても、そこは譲れない一線なのだ。
子どもの頃、実家で飼っていた雑種犬は、食卓の下でおこぼれを待つのが日課だった。祖母がこっそり煮魚の骨を落としてやると、尻尾を振って喜んでいた。あの頃は犬の食事に対する知識も今ほど浸透していなかったし、それでも犬は元気に長生きした。だが今は情報も増え、犬種ごとの特性も明らかになっている。ハスキーのような大型犬には、それに見合った責任が伴う。
ある夏の夕方、散歩から帰ってきた直後に、うっかり冷たい水を一気に飲ませてしまったことがある。彼はがぶがぶと音を立てて飲み干し、そのあとしばらくして胃がねじれる「胃捻転」の初期症状らしき様子を見せた。幸い大事には至らなかったが、あのときの焦りは今も忘れられない。運動直後の急な水分補給は、大型犬にとってリスクが高い。少しずつ、落ち着いてから与えるべきだった。知識として知っていたはずなのに、実際の場面では判断が鈍る。そんな自分の未熟さを痛感した出来事だった。
それでも、ハスキーとの暮らしには、気をつけることばかりではなく、喜びもたくさんある。彼らの澄んだ瞳、力強い足取り、ときおり見せる茶目っ気のある表情。朝、フードボウルを手に持ってキッチンに立つと、彼は期待に満ちた顔でこちらを見上げる。そのまなざしには、信頼と期待が混ざり合っている。カリカリと音を立てて食べる姿を見ていると、ああ、ちゃんと生きているんだなと実感する。
食事の時間は、ただ栄養を与えるだけの行為ではない。それは彼らとのコミュニケーションであり、日々の健康状態を確認する機会でもある。食べ方がいつもと違う、残している、水を飲む量が増えた。そうした小さな変化に気づけるかどうかが、飼い主としての責任を果たせているかどうかの目安になる。
ハスキーと暮らすということは、彼らの生命を預かるということだ。それは決して軽いものではないし、時に負担に感じることもあるかもしれない。けれど、その重さの中にこそ、本当の意味での「共に生きる」という実感がある。気をつけるべきことは多いが、それは愛情の裏返しでもある。彼らが健やかに、幸せに生きられるように。そのために私たちができることを、ひとつひとつ丁寧に積み重ねていく。それがハスキーとの暮らしに必要な、ささやかな覚悟なのだと思う。
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