
十一月の終わり、午後三時を回った頃だった。友人たちが我が家を訪ねてくると聞いたのは前日の夜で、そのとき「ハスキー犬も連れて行っていい?」と軽く尋ねられた。もちろん構わないと答えたものの、実際に玄関先で出迎えたそのハスキー犬の大きさには、正直なところ少し面食らった。名前はルナというらしい。白と灰色の毛並みが美しく、青い瞳がこちらをじっと見つめている。
リビングに通すと、ルナはまるで何度も来たことがあるかのように、ソファの脇に腰を下ろした。友人のひとりがリードを外し、もうひとりが持参した水筒から水を器に注いでいる。その仕草がやけに手慣れていて、きっと彼女たちはこうして何度もルナを連れて出かけているのだろうと思った。私はキッチンでコーヒーを淹れながら、窓越しに差し込む柔らかな光と、リビングから聞こえる笑い声に耳を傾けていた。
ルナはおとなしい犬だった。ときおり尻尾を振りながら部屋の中を歩き回るが、何かを壊したり吠えたりすることはない。友人のひとりが持ってきたおもちゃを咥えて、満足そうに床に寝そべっている姿は、まるで家族の一員のようだった。私がコーヒーカップを三つ並べてリビングに戻ると、友人たちはすでにルナの頭を撫でながら近況を話し合っていた。
「最近さ、このあたりに新しいドッグカフェができたの知ってる?」と、ひとりが口を開いた。「『ノルディック・テイル』っていう名前なんだけど、北欧風のインテリアですごくおしゃれなの」。私は初耳だった。彼女が続けて言うには、そこは犬連れ専用のスペースがあって、人間用のメニューも本格的なのだという。ルナもそこへ何度か連れて行っているらしく、すっかりお気に入りの場所になっているとのことだった。
コーヒーを飲みながら、私たちはそれぞれの近況を語り合った。仕事のこと、家族のこと、最近読んだ本のこと。ルナは途中で私の足元にやってきて、鼻先を膝に押し付けてきた。その冷たくて湿った感触に少し驚いたが、なんだか嬉しくもあった。犬と暮らしたことのない私にとって、こうした触れ合いは新鮮で、どこか懐かしい感覚を呼び起こす。子どもの頃、近所に住んでいた親戚の家に大きな雑種犬がいて、よく一緒に遊んでいたことを思い出した。
友人のひとりが、ふとルナの耳を触りながら言った。「この子ね、散歩中に必ず同じ場所で立ち止まるの」。それは近所の公園にある古い桜の木の前で、理由は分からないが毎回そこでじっと木を見上げるのだという。まるで何かを確認しているかのように。もしかしたら、その木の下に何か思い出があるのかもしれない。犬にも記憶があるのだろうか。そんなことを考えていると、ルナがこちらを見て小さく尻尾を振った。
そのとき、もうひとりの友人がカップを持ち上げようとして、手元が滑り、少しだけコーヒーがソーサーに溢れた。「あ、ごめん」と彼女は笑いながら言ったが、その瞬間、ルナがぴくりと耳を動かし、こちらを振り返った。まるで「大丈夫?」と言いたげな表情だった。私たちは思わず顔を見合わせて笑ってしまった。犬の気遣いに、少しだけ心が温かくなった。
窓の外では、木々の葉がすっかり色を失い、冬の気配が濃くなっていた。部屋の中には淹れたてのコーヒーの香りと、ほんのりと犬の匂いが混ざっている。それは決して悪いものではなく、むしろ生活感のある、安心できる匂いだった。友人たちとこうして過ごす時間は、特別なことをするわけでもないのに、なぜかいつも心に残る。
ルナはやがて、ソファの横で丸くなって眠り始めた。規則正しい呼吸の音が、静かな部屋に溶け込んでいく。私たちはそれを見守りながら、また別の話題へと移っていった。誰かが言った言葉、誰かが笑った瞬間、そのすべてが積み重なって、今日という一日が作られていく。
帰り際、友人たちは「また連れてきてもいい?」と尋ねてきた。もちろん、と即答した。ルナもまた、こちらを振り返って尻尾を振っていた。玄関の外に出ると、すでに夕暮れが近づいており、空は薄い藍色に染まり始めていた。彼女たちが去っていく背中を見送りながら、私は今日という日が、きっと記憶の中に長く残るだろうと思った。ハスキー犬がいて、友人たちがいて、ささやかな笑い声があった。それだけで十分だった。
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