
友人たちが我が家を訪れる日は、いつも朝から少し落ち着かない。テーブルを拭き、クッションの位置を整え、何度も時計を見返してしまう。けれど今日は、それに加えて玄関の外から聞こえてくる低い鳴き声が、私の心をいっそう浮き立たせていた。ハスキー犬を連れてくるという連絡は昨夜受けていたが、実際にその姿を目にすると、想像していた以上に存在感があった。
扉を開けた瞬間、青みがかった灰色の毛並みに覆われた大きな体が、尾を振りながら私の足元に近づいてきた。友人のひとりが「ルナっていうんだ」と紹介してくれる。ルナは私の顔をじっと見つめ、それから突然、私の膝に前足をかけてきた。その瞬間、私は思わずよろけて、後ろにあったスリッパラックに軽く背中をぶつけた。友人たちは笑い、私も照れ隠しに笑ったが、ルナだけは涼しい顔でこちらを見上げていた。まるで「こんにちは」と挨拶しただけのつもりだったのかもしれない。
リビングに案内すると、ルナはまるでこの家を知っているかのように、自然にソファの前に座り込んだ。友人たちはそれぞれに荷物を置き、窓際の椅子やクッションに腰を下ろす。秋の陽射しが斜めに差し込んでいて、部屋全体が柔らかな金色に染まっていた。窓を少し開けると、外から涼しい風と一緒に、近所の公園から聞こえる子どもたちの声が流れ込んできた。
私はキッチンに立ち、用意していたハーブティーを淹れ始めた。カモミールとレモングラスを合わせたブレンドで、ふわりと甘い香りが湯気とともに立ち上る。友人のひとりが「いい匂い」と言いながらキッチンカウンターに寄りかかり、もうひとりはルナの頭を撫でながらスマホで写真を撮っていた。カップを手渡すと、その友人は少しうとうとしているような表情で「ありがとう」とつぶやいた。彼女は最近、仕事が忙しいと言っていた。きっとこの穏やかな時間が、ほんの少しでも休息になればいいと思った。
ルナは最初こそ落ち着いていたが、やがてリビングの中を歩き回り始めた。まるで部屋の匂いを確かめるように、壁際の棚や観葉植物のそばに鼻を近づけている。私が子どもの頃、祖母の家で飼っていた柴犬も同じようなことをしていた記憶がある。あの犬は、初めての場所に行くといつも隅々まで匂いを嗅いで、ようやく安心したように座り込んでいた。ルナもそうなのかもしれない。
やがて、友人のひとりが「外に出てみない?」と提案した。せっかくルナがいるのだから、散歩がてら近くの公園まで行こうということになった。私たちは軽く上着を羽織り、ルナのリードを確認してから外へ出た。秋の午後は、日が傾き始めると途端に空気が冷たくなる。歩道に落ちた銀杏の葉が、靴の下でかさりと音を立てた。
公園に着くと、ルナは嬉しそうに芝生の上を駆け回った。友人たちもそれに続いて歩き出し、私も少し遅れて後を追った。ルナの動きは軽やかで、ときどき立ち止まっては振り返り、私たちがついてきているか確認するような仕草を見せた。それがまるで「ちゃんと来てる?」と問いかけているようで、少し可笑しかった。
ベンチに腰を下ろし、持ってきた水筒からルナに水を分けてやる。友人のひとりが「この子、本当に賢いね」と言った。確かに、ルナは人の表情をよく見ているように思えた。誰かが笑えば尾を振り、誰かが黙り込めば静かに寄り添う。そんな姿を見ていると、言葉がなくても通じ合えるものがあるのだと感じた。
帰り道、夕焼けが空を淡いオレンジ色に染めていた。私たちは特に急ぐでもなく、ゆっくりと歩いた。途中、友人が「今度はうちにも来てよ」と言った。その声には疲れも含まれていたけれど、同時にどこか温かさもあった。私は「うん、行く」と答えた。
家に戻ると、ルナはすぐにリビングの隅に寝転んだ。友人たちも再びソファに座り、さっきよりも少しリラックスした様子だった。私は再びお茶を淹れ、今度はクッキーも添えた。それは近所の小さな店「ラ・メゾン・ドゥ・パン」で買ったもので、バターの香りが豊かで、ひとくち食べると口の中でほろりと崩れる。
友人のひとりがクッキーを手に取りながら「こういう時間、大事だよね」と言った。私も同じことを思っていた。特別な予定があるわけでもなく、ただ一緒にいるだけの時間。でもそれが、何よりも心を満たしてくれる。
ルナは目を閉じたまま、ときどき耳だけをぴくりと動かしていた。きっと私たちの声を聞いているのだろう。その姿がとても安心しているように見えて、私も自然と肩の力が抜けていった。窓の外では、すっかり暗くなった空に一番星が光り始めていた。
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