
友達の家にハスキー犬がいると聞いて、正直最初はちょっと怖かった。
あの青い目でじっと見つめられると、なんていうか、こっちの考えてることが全部バレてる気がして落ち着かないんだよね。でも実際に会ってみたら、想像してたのとは全然違った。名前はルナっていうんだけど、とにかく遊びたがりで、僕が玄関に入った瞬間からずっと尻尾を振ってた。友人の家の庭は結構広くて、夏の午後の日差しが芝生にまだらな影を落としてて、そこでルナは僕たちが投げたボールを追いかけ回してた。汗ばんだ空気の中に犬の息遣いと、芝生を蹴る音が混ざって、なんだか懐かしい感じがした。小学生の頃、近所の空き地で遊んでた時の匂いに似てたのかもしれない。
ハスキー犬って体力がすごいんだよ。こっちが疲れてヘトヘトになっても、まだ遊び足りないって顔でこっちを見てくる。友人が「この犬、一日中でも走ってられるから」って笑いながら言ってたけど、本当にそうだった。僕らが三人がかりで交代しながらボール投げしても、ルナは全然疲れない。むしろ僕たちの方が先にギブアップして、木陰に逃げ込んだ。
そういえば、あの日集まってたのは高校時代の友達三人だったんだけど、みんなそれぞれ違う方向に進んでて、久しぶりに顔を合わせた感じだった。一人は都内で働いてて、もう一人は地元で家業を継いでて。で、ルナの飼い主である友人は、なぜか犬のトレーナーの資格を取ろうとしてた。「人間関係より犬との関係の方が楽だから」って冗談めかして言ってたけど、半分は本気なんだろうなって思った。
ルナが僕たちの間を行ったり来たりしながら、誰にでも平等に愛想を振りまいてるのを見てると、なんか羨ましくなってくる。犬って本当に裏表がないから。嫌いなら嫌いってはっきりするし、好きなら全力で好きって伝えてくる。人間みたいに、建前と本音を使い分けたりしない。
水を飲ませようとしたら、ルナは水入れをひっくり返して、びしょ濡れになった友人の靴を舐め始めた。「おい、やめろって」って友人が笑いながら言ってたけど、ルナは全然聞いてない。その光景を見てたもう一人の友人が、「犬飼いたいな」ってぽつりと言った。都内の狭いアパートに住んでる彼には無理な話だけど、その時の彼の表情は本気だった。
それから何度か、僕たちはルナに会いに行くようになった。最初は「久しぶりに集まろうぜ」みたいな口実が必要だったのに、いつの間にか「ルナに会いに行く」が目的になってた。犬を中心に人が集まるって、考えてみれば不思議な話だけど、でも自然なことなのかもしれない。ルナがいると会話が途切れても気まずくならないし、一緒に何かをしてる感じがある。ただ座って喋ってるだけより、ずっと楽だった。
秋になって気温が下がってくると、ルナはさらに元気になった。ハスキー犬は暑さに弱いらしくて、夏場は少し動いただけでハァハァ言ってたけど、涼しくなってからは本領発揮って感じ。友人が「冬になったら雪山に連れて行きたい」って言い出して、僕らも便乗することになった。実現するかどうかは分からないけど…。
犬を介して友達と会う頻度が増えるなんて、思ってもみなかった。ルナがいなかったら、僕らはたぶん年に一回会うか会わないかの関係になってたと思う。共通の話題があるって、やっぱり大事なんだろうね。その話題が犬だっただけで。
最近、別の友人も犬を飼い始めた。ビーグル犬らしい。今度はそっちにも遊びに行く予定。


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