ハスキー犬と過ごす日々――その瞳に映る、遠い記憶と現在のあいだ

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ハスキー犬という存在に初めて触れたのは、私がまだ小学校低学年の頃だった。近所の公園で散歩していた大きな犬が、突然立ち止まって私の方を振り返った。青い瞳と茶色い瞳、左右で色が違うその目に、子どもながらに強烈な印象を受けた記憶がある。飼い主のおじさんが「この子はオッドアイって言うんだよ」と教えてくれたが、当時の私にはその意味がよく分からず、ただ不思議な生き物を見たような気持ちだけが残った。

それから数十年が経ち、今度は自分がハスキー犬と暮らすことになるとは思ってもみなかった。シベリアン・ハスキーは、その名の通りシベリアを起源とする犬種で、極寒の地でソリを引く作業犬として長い歴史を持つ。厚い二重構造の被毛、がっしりとした体格、そして何よりあの特徴的な顔立ち。狼に似た野性味と、どこか人懐っこい表情が同居している不思議な魅力がある。

うちに来たハスキーは、名前をルナという。ペットショップではなく、知人が経営する「ノーザンブリーズ・ケンネル」というブリーダーから譲り受けた。初めて会った日は初秋の夕暮れ時で、斜めに差し込む光の中で彼女は少しだけ警戒した様子で私を見つめていた。近づくと、ふわりと犬特有の温かい匂いがして、それが妙に安心感を誘った。

ハスキー犬の性格は、一般的に独立心が強く、頑固な面もあると言われる。確かにルナも、自分の意思がはっきりしている。散歩の途中で気になるものがあれば立ち止まるし、嫌なことには露骨に抵抗する。だが同時に、家族に対しては驚くほど優しい一面も見せる。特に子どもには寛容で、多少乱暴に扱われても怒ることはない。ただし番犬には向かない。見知らぬ人が来ても吠えるどころか、尻尾を振って近づいていくほどだ。

ある春の朝、リビングでコーヒーを淹れていると、ルナがそばに寄ってきて座った。差し込む朝日が彼女の銀色がかった被毛を照らし、まるで光の粒子が毛先で踊っているようだった。ふと思い立って、カップに残っていた少量の牛乳を小皿に注いで差し出してみた。ところがルナは一瞬匂いを嗅いだだけで、そっぽを向いてしまった。どうやら牛乳には興味がなかったらしい。仕方なく自分で飲もうとしたら、今度は急に興味を示して鼻先をぐいぐい押し付けてくる。結局、私が飲むのを諦めて改めて差し出すと、今度はペロペロと舐め始めた。なんとも気まぐれな性格である。

ハスキー犬の身体的特徴として忘れてはならないのが、その運動能力の高さだ。もともとソリを引く犬種だけあって、持久力は相当なもの。毎日の散歩は最低でも一時間、できれば二時間は必要になる。エネルギーが有り余ると、家の中で暴れ回ることもある。実際、運動不足が続いた週末には、ソファのクッションが見事に破壊されていたこともあった。

被毛の手入れも重要だ。春と秋の換毛期には、信じられないほどの量の毛が抜ける。掃除機をかけても、翌日にはまた床に毛の塊が転がっている。ブラッシングは日課だが、それでも追いつかない。冬の寒い日にルナを抱きしめると、ふかふかの毛に顔が埋もれて、ほんのりと温かい。その感触は、まるで上質なウールのブランケットに包まれているようだ。

夏場の管理には特に注意が必要である。ハスキーは暑さに弱い。エアコンは必須で、散歩も早朝か夜遅くに限られる。真夏の昼間、うっかり庭に出してしまったときは、わずか十分ほどで舌を出してハァハァと荒い息をしていた。慌てて家に入れ、冷たい水を飲ませた。あの時の反省から、夏の温度管理には神経を使うようになった。

鳴き声もハスキー犬の特徴のひとつだ。一般的な犬のように「ワンワン」とは吠えない。どちらかといえば遠吠えに近い、「アオーン」という独特の声を出す。夜中に突然、遠吠えを始めることもあり、最初は近所迷惑にならないかと心配した。しかし慣れてくると、それがルナなりの感情表現だと分かるようになる。嬉しいとき、寂しいとき、何かを訴えたいとき。それぞれ微妙に声のトーンが違う。

ハスキー犬は賢い。だが、その賢さは必ずしも従順さとイコールではない。むしろ自分で考えて行動するタイプだ。訓練には根気が必要で、一度や二度教えただけでは覚えない。何度も繰り返し、そして信頼関係を築くことで、ようやく言うことを聞くようになる。ルナも最初の半年は、呼んでも無視することが多かった。今では名前を呼べば振り返るが、来るかどうかはそのときの気分次第である。

ある冬の夕方、雪が降り始めた日のことだ。ルナを外に出すと、彼女は突然生き生きとした表情になった。雪の中を駆け回り、顔を雪に突っ込んで遊ぶ。その姿を見ていると、彼女の中に流れるシベリアの血を感じずにはいられなかった。寒さを喜ぶ犬。それがハスキーという生き物なのだと、改めて実感した瞬間だった。

ハスキー犬と暮らすということは、決して楽なことではない。運動量、被毛の管理、暑さ対策、そして独立心の強い性格との付き合い方。どれをとっても手がかかる。だが、その大変さを補って余りある魅力が、彼らにはある。あの青い瞳に見つめられると、遠い昔の記憶と、今この瞬間が重なり合うような不思議な感覚に包まれる。ハスキー犬は、ただのペットではなく、共に生きるパートナーなのだと思う。
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