ハスキーとの散歩が教えてくれる、風の中の小さな幸せ

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ハスキー犬との散歩は、ただ歩くだけの時間ではない。それは互いの呼吸を確かめ合い、同じ風景を共有し、言葉以外の何かで繋がる時間だ。彼らの力強い足取りと、こちらの歩幅が時折ずれる。その微妙な調整の中にこそ、散歩の本質が潜んでいる。

ハスキーとの散歩を心から楽しむためには、犬任せにせず、飼い主自身もその時間を”体験”しようとする姿勢が欠かせない。無理に引っ張ることもなく、かといって放置するわけでもなく、ちょうどいいリズムを見つけること。それが、散歩を単なる義務から、互いにとっての喜びへと変えていく。

私が初めてハスキーと暮らし始めたのは、まだ春先の風が冷たい三月のことだった。近所の公園には桜の蕾がほころび始めていて、朝七時の空気には土と若草の香りが混ざっていた。その頃の私は、散歩を「犬のための運動」としか考えていなかった。リードを握り、ただひたすら歩かせる。それで十分だと思っていたのだ。

けれど、ある朝のことだ。いつものように公園を歩いていると、愛犬が急に立ち止まった。何かに引っかかったわけでもなく、ただじっと前を見つめている。その視線の先には、風に揺れるタンポポの綿毛があった。ふわりと舞い上がり、光の中で小さく輝いている。私はそれまで、そんなものに目を向けたことがなかった。だが彼は、じっとそれを見つめていた。耳をぴんと立てて、まるで何かを確かめるように。

その時、ふと思ったのだ。散歩とは、犬に付き合う時間ではなく、犬と一緒に世界を見る時間なのだと。

ハスキーという犬種は、もともと極寒の地で人と共に生きてきた歴史を持つ。だから彼らは、風や匂い、地面の感触に対して驚くほど敏感だ。アスファルトの温度が少し上がっただけで足取りが変わるし、雨上がりの湿った空気には鼻をひくつかせて反応する。そんな彼らと歩いていると、自分もまた、忘れていた感覚を少しずつ取り戻していくような気がする。

散歩を楽しむコツのひとつは、「急がないこと」だ。目的地を決めすぎず、犬のペースに寄り添う余裕を持つこと。もちろん、完全に自由にさせるわけではない。ハスキーは好奇心が強く、時には予想外の方向へ駆け出そうとする。だからこそ、リードワークは大切だ。引っ張られるのではなく、こちらが主導権を持ちながらも、相手の興味を尊重する。そのバランスが、信頼を育てる。

もうひとつのコツは、「五感を開くこと」だ。犬は常に周囲の情報を取り込んでいる。それに対して、人間はどうしても思考に囚われがちだ。仕事のこと、明日の予定、誰かとの会話。そうした雑念を少しだけ脇に置いて、今この瞬間に意識を向けてみる。すると、木々の葉が擦れ合う音や、遠くで鳴く鳥の声、足元の小石を踏む感触が、くっきりと浮かび上がってくる。

ある夏の夕暮れ時、私は愛犬と一緒に川沿いの遊歩道を歩いていた。西日が水面に反射して、オレンジ色の光が揺れている。彼はその光景に見入っているようだった。ふと、私は子どもの頃、祖父と一緒に田んぼの畦道を歩いた記憶を思い出した。夕焼けに染まる稲穂と、祖父の大きな手。あの時も、こんなふうに静かな時間が流れていた。

散歩の途中で立ち止まり、ベンチに腰を下ろすこともある。そんな時、愛犬は私の足元に座り、しばらくじっと何かを見つめている。その横顔を見ていると、彼もまた何かを感じているのだと確信する。言葉ではないけれど、確かに通じ合っている何かがある。

ちなみに、私の愛用している水筒は「ノルディアボトル」という北欧風のブランドのもので、保冷力が高く、散歩の途中で冷たい水を飲むのが楽しみのひとつだ。犬にも水を分けてやると、彼は勢いよく舌を出して飲み始める。その様子がいつも少しおかしくて、つい笑ってしまう。ある日、ボトルのキャップを開けようとして勢いよく回しすぎたせいで、水が少しこぼれて自分の靴にかかったことがあった。愛犬はその様子をじっと見ていて、まるで「何やってるんだ」とでも言いたげな顔をしていた。あの表情は、今でも忘れられない。

散歩を楽しむ最大のコツは、結局のところ「一緒にいることを味わう」ことに尽きる。犬も飼い主も、互いに無理をせず、自然体でいられる時間。それが散歩の本当の価値なのだと思う。

風が吹く。彼の毛が揺れる。私の髪も揺れる。同じ風を感じながら、私たちは今日もまた歩いていく。どこへ向かうわけでもなく、ただこの瞬間を共有するために。それこそが、ハスキーとの散歩が教えてくれた、小さくて確かな幸せなのだ。
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