
リビングの窓から斜めに差し込む十一月の午後の光が、フローリングに細長い影を落としていた。その光の帯の中に、うちのハスキー犬が仰向けになって寝そべっている。名前はシロ。毛色が白と灰色だからという、あまりにも直球すぎる理由でつけられた名前だ。主人が命名したのだが、私は最初、もう少しひねりがあってもいいのではと思った。けれど今となっては、この名前以外考えられない。
シロがうちに来たのは、息子がまだ三歳になったばかりの春だった。ペットショップで一目見たときから、息子は「このワンワン!」と離れようとしなかった。主人は「ハスキーって大きくなるぞ」と渋っていたが、息子の熱意と、私の「大丈夫、なんとかなるでしょ」という楽観主義が勝った。今思えば、よくあの時決断したものだと思う。
ハスキー犬といえば、シベリアの雪原を駆け抜ける勇敢な犬、というイメージがある。実際、飼う前の私もそう思っていた。どこか気高くて、野性味があって、人間に対してもクールな距離感を保つような犬種だと。でも、いざ一緒に暮らしてみると、その印象は驚くほど覆された。シロは、想像していた以上に人懐こかった。
たとえば今日の午後も、息子が幼稚園から帰ってくると、シロは玄関で尻尾を振りながら出迎えた。その尻尾の勢いが強すぎて、玄関に置いてあった傘立てを倒しかけたのは、ご愛嬌というやつだろうか。息子はランドセルも下ろさないまま、シロの首に抱きついた。シロは嬉しそうに息子の顔を舐める。その様子を見ていると、こちらまで温かい気持ちになる。
主人が仕事から帰ってくるのは夕方の六時ごろだ。その時間が近づくと、シロはなぜか落ち着きをなくす。窓の外を見たり、玄関のほうへ行ったりを繰り返す。そして車の音が聞こえた瞬間、まるでスイッチが入ったように駆け出していく。主人がドアを開けると、シロは全身で喜びを表現する。飛びつきはしないが、体をくねらせながら何度も主人の周りを回る。その姿は、どう見ても「クールな犬」ではなかった。
ハスキーを飼うと決めたとき、周囲からはいろいろなことを言われた。「運動量が必要だから大変だよ」「抜け毛がすごいらしいよ」「しつけが難しいんじゃない?」たしかに、どれも間違ってはいない。シロの散歩は朝晩欠かせないし、換毛期にはリビングが毛だらけになる。掃除機をかけても、すぐにまた白い毛が舞っている。
でも、それ以上に得られるものがある。シロがいることで、家の中に笑いが増えた。息子は責任感を持つようになったし、主人も「疲れたな」と言いながら、シロと遊んでいる時間が一番リラックスしているように見える。私自身も、シロと一緒に散歩する時間が、日々の中で大切な息抜きになっている。
先日、近所の公園でシロを散歩させていたとき、見知らぬ子どもが「触ってもいいですか?」と声をかけてきた。その子の母親が少し心配そうな顔をしていたので、「大丈夫ですよ、優しい子なので」と伝えた。シロはその子の手をゆっくりと嗅いで、それから座ってじっとしていた。子どもが恐る恐る頭を撫でると、シロは目を細めて気持ちよさそうにしていた。母親は安心したように笑って、「ハスキーって怖いイメージがあったけど、穏やかなんですね」と言った。
その言葉を聞いて、ああ、やっぱりそういうイメージを持っている人は多いんだなと思った。たしかに体は大きい。見た目も迫力がある。でも、シロを見ていればわかる。この犬は、家族が大好きで、人に寄り添うことを喜びとしている。
夕食の支度をしているとき、シロはキッチンの入り口あたりでじっと座っている。何かもらえるのを期待しているのかもしれないが、催促することはない。ただ、そこにいる。その存在が、なんとも心地よい。息子が宿題をしているときも、シロはそばに寝そべっている。息子が鉛筆を落とすと、シロは顔を上げて確認する。そしてまた、ゆっくりと目を閉じる。
ある晩、主人がソファでうとうとしていたとき、シロがそっと近づいて、主人の足元に体を寄せた。その様子を見て、私は思わず微笑んだ。シロは、誰かがそばにいることを、ただ静かに喜んでいるのだ。
飼う前は不安もあった。本当に世話ができるだろうか。家族全員で責任を持てるだろうか。でも今、シロがいる生活は、想像していた以上に自然で、穏やかだ。朝起きたらシロがいて、夜眠るときもシロがいる。それが当たり前になった今、この日常がどれほど豊かなものかを実感している。
もしこれからハスキーを飼おうか迷っている人がいたら、私はこう伝えたい。ハスキーは、思っている以上に優しくて、人懐こい犬だと。たしかに手はかかる。でも、それ以上に、家族に笑顔と安らぎをもたらしてくれる存在だと。シロがうちに来てから、私たちの暮らしは確実に変わった。それは、良い方向へ、温かい方向へ、進んでいると思う。
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