ハスキーと暮らす日々──食卓を囲む前に知っておきたいこと

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窓の外では、まだ暗い早朝の空気が少しずつ白んでいく。秋の終わりの六時前、キッチンに立つとひんやりとした床の感触が足裏に伝わってきて、ああ、もう冬が近いのだと実感する。そんな静けさの中で、私の隣にはいつも一頭のハスキー犬がいる。名前はリク。彼と暮らし始めてから三年が経った。

ハスキー犬と一緒に暮らすということは、想像していたよりもずっと繊細で、同時にずっと力強い経験だった。彼らはその見た目の美しさや、どこか凛とした佇まいから、飼いやすい犬種だと誤解されることがある。けれど実際には、気をつけなければならないことが驚くほど多い。特に食事に関しては、一度きちんと向き合わなければ、取り返しのつかないことになりかねない。

リクを迎えた最初の冬、私は彼にドッグフードと一緒に、つい人間の食べ物を少し分け与えてしまった。それは何気ない行動だった。たとえば、夕食のあとに残ったチキンの皮を、ほんの少しだけ。彼は喜んで食べた。その光景がうれしくて、私は何度か同じことを繰り返してしまった。だが、ある日の夜中、リクが突然吐き始めた。慌てて動物病院に連れて行くと、獣医師は静かに言った。「ハスキーは消化器官が敏感なんです。人間の食べ物は避けてください」と。

その言葉が、私にとってすべての始まりだった。

ハスキー犬にとって、食事は単なる栄養補給ではない。彼らの体質、運動量、そして精神状態にまで影響を与える重要な要素だ。特にハスキーは、もともと寒冷地で生まれた犬種であり、エネルギー効率が非常に高い。つまり、少ない食事でも多くのエネルギーを生み出せる体をしている。だからこそ、過剰な食事や不適切な栄養バランスは、肥満や内臓への負担に直結する。

リクの食事には、今では専用のドッグフードを使っている。それも、タンパク質が豊富で、脂質が適度に抑えられたものを選んでいる。ブランド名は「ノルディア・ライフ」という北欧風のパッケージのもので、獣医師に勧められてからずっと愛用している。朝と夕方、決まった時間に決まった量を与える。その規則正しさが、リクの健康を守っている。

気をつけるべきは、食事の内容だけではない。与え方もまた、重要だ。ハスキーは賢く、そして頑固な一面を持っている。だから、食事の時間に甘えさせすぎると、すぐに主従関係が曖昧になる。私は最初の頃、リクが食べ終わるまでそばでじっと見守っていた。すると彼は、私が見ているときだけ食べるようになってしまった。まるで「見ててくれないと食べないよ」と言わんばかりに。ある朝、私がうっかりコーヒーを淹れに立ち上がったとき、リクがこちらをじっと見つめたまま、フードボウルの前で完全に停止していた。その姿がどこか演技じみていて、思わず笑ってしまった。

それからは、フードを置いたらすぐにその場を離れるようにした。彼が一人で食べる習慣をつけるためだ。最初は戸惑っていたリクだったが、次第に自分のペースで食事をするようになった。今では、私がキッチンで洗い物をしている音を背に、静かにカリカリと音を立てて食べている。

食事に関してもう一つ気をつけなければならないのは、水分だ。ハスキーは運動量が多く、体温調整が苦手な犬種でもある。特に夏場は注意が必要で、散歩のあとには必ず新鮮な水を用意する。リクは喉が渇くと、まず私の顔を見上げてから、水入れのある場所へ歩いていく。その仕草がまるで「お願い、水をちょうだい」と言っているようで、何度見てもかわいらしい。

子どもの頃、私の実家には雑種の犬がいた。その犬は何でも食べたし、特に食事に気を遣わなくても元気だった。だから、犬を飼うということに対して、私はどこか楽観的だったのかもしれない。けれどリクと暮らすようになって、犬種によってこれほどまでに違いがあるのだと知った。ハスキーという犬種は、その美しさと引き換えに、繊細さも持ち合わせている。

食事の時間、リクは決して急いで食べない。ゆっくりと、まるで味わうように食べる。その様子を見ていると、彼が今この瞬間を生きているのだと感じる。私たち人間は、つい忙しさに追われて、食事を急いでしまうことがある。けれど彼は違う。彼にとって食事は、生きるための儀式であり、喜びなのだ。

一緒に暮らすということは、相手の生き方に寄り添うということだ。それは人間同士でも、人と犬でも変わらない。ハスキー犬と暮らすなら、彼らの体質を知り、食事に気を配り、そして何よりも、彼らのペースを尊重することが大切だ。そうすることで初めて、信頼という名の絆が生まれる。

今朝もリクは、私の足元で静かに朝食を待っている。彼の澄んだ瞳が、窓から差し込む淡い光に照らされている。私はフードボウルに適量を注ぎ、そっと床に置く。リクは一度私を見上げてから、ゆっくりと食べ始めた。その背中を見ながら、私もまた一日を始める準備をする。
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