
ハスキー犬と暮らし始めて最初の散歩で、私は電柱に激突しかけた。
あれは確か5月の夕方だったと思う。仕事から帰ってきて、さあ散歩に行こうかって玄関を出た瞬間、うちのルナ(当時8ヶ月)が突然ダッシュ。リードを握っていた私の腕が伸びきって、気づいたら足が地面から浮いてた。マジで。ハスキーの引く力って、想像の三倍くらいある。友達に「大型犬飼うんだ〜」って言ったとき「散歩大変だよ」って言われたけど、こういうことだったのかと理解した瞬間だった。
最初の一ヶ月は本当に地獄で。毎日腕が筋肉痛。朝6時に起きて散歩に行くんだけど、住宅街の静かな道でルナがグイグイ引っ張るから、私の足音だけがやたらバタバタうるさくて恥ずかしかった。近所の人に「元気なワンちゃんですね」って言われるたび、笑顔で返事しながら心の中で「元気すぎるんだよ」って叫んでた。
で、さすがにこれはまずいと思って調べたんだよね。ハスキー犬の散歩のコツ。ネットで出てくる情報って「リーダーウォークを教えましょう」とか「引っ張ったら立ち止まる」とか、理論はわかるんだけど実際やってみると全然うまくいかない。立ち止まっても、ルナは気にせず別の方向に行こうとするし。あと「おやつで気を引く」っていうのも試したけど、うちの子、散歩中は食べ物より匂い嗅ぎたい派だから効果なし。
そういえば、この前スーパーで「ドッグトレーナー養成講座」みたいなチラシ見かけて、ちょっと行ってみようかなって思ったんだけど。受講料見たら8万円とか書いてあって即座に諦めた。そんな金あったら、ルナのおやつ何ヶ月分買えるんだよって話…だけど。
結局、私がたどり着いた方法はめちゃくちゃシンプルで。リードを短く持つ。これだけ。いや、本当に。長く持ってると犬が「あ、この距離まで行けるんだ」って学習しちゃうらしい。だから最初から自分の腰のあたりでリードを持って、ルナが横にいる状態をキープする。引っ張られそうになったら、リードをぐっと自分の体に引き寄せて、犬が前に出られないようにする。
最初の一週間くらいは、ルナも「なんで前に行けないの?」って感じで不満そうだった。立ち止まって私の顔を見上げてくる。その顔がまた可愛くて、つい「ごめんね」って言いそうになるんだけど、ここで折れたら意味ないから我慢。犬って賢いから、「この人は本気だな」ってわかると態度変えてくる。二週間目くらいから、明らかにルナの歩き方が変わった。
あと気づいたのが、散歩前の興奮を落ち着かせるのも大事だってこと。玄関でリードつけるとき、ルナがピョンピョン跳ねるのを待ってから出発するようにした。落ち着いて座るまでドアを開けない。これだけで散歩の最初の引っ張りがかなり減る。人間でいうと、興奮してる状態で大事な会議に出るようなもんで、冷静じゃないんだよね。
ハスキーって元々ソリ犬だから、引っ張るのが仕事みたいなもんで。だから「引っ張っちゃダメ」って教えるのは、犬からしたら「え、でもそれが僕の役目じゃないの?」って混乱させてることになる。そう考えると、ちょっと申し訳ない気持ちにもなるんだけど、都会で暮らす以上はルールがあるからね。
今では朝の散歩が一番好きな時間になった。夏の早朝、まだ誰も歩いてない公園を、ルナと並んで歩く。アスファルトがひんやりしてて、遠くから鳥の声が聞こえてきて。ルナは時々立ち止まって草の匂いを嗅ぐけど、もう無理に引っ張ったりしない。私が「行こうか」って声かけると、ちゃんと横に戻ってくる。
完璧かって言われたら、まだ全然そんなことない。猫を見つけたら今でも突進しようとするし、他の犬とすれ違うときはテンション上がって引っ張る。でも、最初の頃みたいに私が引きずられることはなくなった。
散歩のコツって、結局「犬をコントロールする」っていうより「一緒に歩くリズムを作る」ことなのかもしれない。そんなことを考えながら、今日も夕方の散歩に出かける。


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