
ハスキー犬を飼うって決めたとき、正直見た目だけで選んだ。
あの青い目に完全にやられた。ペットショップで初めて見たとき、ガラス越しにこっちをじっと見つめてくるあの子犬の瞳が、なんていうか、北欧の湖みたいで。今思えば完全に衝動買いなんだけど、当時の私は「運命の出会い」とか本気で思ってた。名前はルナにした。月の女神って意味らしいけど、実際は単にかわいい響きだからってだけ。
で、連れて帰ってから三日目。
朝5時に遠吠えで起こされるとは思ってなかった。それも毎日。近所迷惑とかそういうレベルじゃなくて、隣の奥さんが「狼でも飼ってるの?」って真顔で聞いてきたくらい。ハスキーってシベリアが原産で、もともとソリを引く作業犬として育てられてきた犬種なんだよね。極寒の地で何キロも走り続けるスタミナと、群れで行動するための強いコミュニケーション能力を持ってる。つまり、声がでかい。しかも運動量が半端ない。
最初の一ヶ月は本当に大変だった。毎朝6時から1時間の散歩、夕方も1時間。それでも家の中でソファのクッションを噛みちぎったり、玄関のドアをガリガリ削ったり。「こんなはずじゃなかった」って何度思ったか分からない。
そういえば去年の夏、友達の家で飼ってるチワワを預かったことがあって。あの子はずっと膝の上で寝てるような大人しい子だったんだよね。散歩も15分くらいでハァハァ言い出すし。犬ってこういうもんだと思ってた部分もあったかも。
ハスキーの毛は二重構造になってる。下毛が密に生えてて、その上に長い上毛が覆ってる。これがまた抜けるのなんの。春と秋の換毛期には、毎日掃除機かけても追いつかない。ブラッシングすると、小型犬一匹分くらいの毛が取れる。最初は「こんなに抜けて大丈夫?」って心配したけど、これが普通らしい。今ではコロコロが手放せない生活になってる。黒い服なんてもう着られない…だけど。
性格は、頑固。とにかく頑固。しつけ本には「ハスキーは独立心が強く、訓練が難しい」って書いてあったけど、本当にその通りだった。「お座り」を覚えさせるのに三週間かかった。しかも、気が向いたときしかやらない。おやつで釣ろうとしても、興味なさそうにプイってされる。でもね、散歩中に他の犬に会うと、尻尾をブンブン振って喜ぶ。人間より犬のほうが好きみたい。
近所のドッグランに通うようになってから、少し楽になった。そこで会ったハスキー仲間の飼い主さんたちと話してると、みんな同じような苦労をしてる。「うちの子も靴下10足くらい食べた」とか「カーテンを全部引きちぎられた」とか。なんか安心した。私だけじゃないんだって。
体重は成犬で20キロから27キロくらい。オオカミに似てるって言われるけど、実際は全然違う。オオカミより小さいし、何より人懐っこい。ルナは宅配便の人が来るたびに、しっぽ振りながらドアに突進してく。番犬には向いてない。泥棒が来ても「遊んで!」って寄っていきそう。
目の色は青だけじゃなくて、茶色とか、左右で色が違う「オッドアイ」の個体もいる。ルナは両目とも青いけど、光の加減で灰色に見えたり、水色に見えたり。写真撮るとき、この目の色がうまく出ないんだよね。実物のほうが断然きれい。
鳴き声も独特で、「ワンワン」じゃなくて「アウォーン」って感じ。遠吠えするときは本当に狼みたい。最初はびっくりしたけど、今では「あ、救急車のサイレンに反応してるな」ってすぐ分かる。
飼い始めて一年半。今でも大変だけど、後悔はしてない。朝早く起きるのも慣れたし、運動不足も解消された。何より、あの青い目で見つめられると、全部許せちゃう。ずるいよね、あの顔。
ハスキーを飼うなら、覚悟は必要。でも、それだけの価値はある…と思う。たぶん。


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