
夏の夕暮れ、西日がアスファルトをじりじりと焼きつける時間帯に、ふと公園の端で足を止めたことがある。視線の先にいたのは、グレーと白の毛並みをまとった一頭の大型犬だった。その瞳は、薄い空色というより、もっと深い——氷をとかした水のような、透明なブルー。思わず「なんて犬だろう」と声に出してしまった。それがわたしとハスキー犬の、最初の出会いだった。
シベリアンハスキーは、
オオカミに似た強面でワイルドな外見が特徴的な犬種だ。しかしその外見とは裏腹に、攻撃性は低く、友好的でおおらかな性格の持ち主
である。見た目の迫力に圧倒されて近づけない人も多いけれど、実際に接してみると、その印象はあっさりと覆される。
ハスキー犬はどんな犬なのか。その特徴は何か。気になっている人のために、もう少し丁寧に語ってみたい。
透き通るような美しい瞳と凛々しい表情が印象的なシベリアンハスキーは、多くの人が犬種名から姿かたちを簡単に思い浮かべられるほど、知名度も人気も高い犬種だ。
体格については、
オスの体高は約53.5〜60cm、メスは約50.5〜56cmで、体重はオスで約20.5〜28kg、メスは約15.5〜23kgが平均となり、大型犬に分類される。
毛並みはふさふさと柔らかく、触れると驚くほど密度がある。子どものころ、祖父の家にいた秋田犬の背中に顔をうずめたときの感触を思い出す。あの温かくて少しほこりっぽい匂い。ハスキーの毛はそれよりもさらに豊かで、冬の寒さを想起させる厚みがある。
柔らかくふさふさの毛を持つため抜け毛が多く、毎日のブラッシングが欠かせない。体臭は気にならないことが多いものの、シャンプーを月2回程度おこなうと清潔を保てる。
性格の話をするなら、「賢くて、でも頑固」という言葉がいちばん近い気がする。
新しいことを学ぶのが得意で飼い主の指示をよく理解する一方、物覚えが良すぎるがゆえに、悪いこともすぐに覚えてしまうことがある。また退屈すると、破壊行動や脱走癖につながることもあるため、十分な運動と刺激が必要だ。
これはつまり、「賢さ」がそのまま「手ごわさ」にもなるということ。頭のいい子どもほど、退屈を嫌うのと似ている。
運動量については覚悟が必要だ。
シベリアンハスキーはそり犬だったため運動欲求が強くスタミナがある。エネルギーが充分に消費されないとストレスをためてしまうことがあるので、毎日朝晩1時間程度の散歩を欠かさないようにしたい。散歩のほかに、ドッグランで思いきり走らせる時間も必要だ。
ある飼い主さんが笑いながら話してくれたことがある。「先にへばるのは、いつも私の方なんです」と。
とにかくスタミナがあるので、飼い主が先にへばってしまうこともある
というのは、あながち冗談でもないらしい——これがハスキーとの暮らしにおける、小さくも確かなユーモアだ。
架空のペット用品ブランド「ノルディア・ライフ」が提唱するように、ハスキーとの暮らしは「日常に北の風を連れてくる」ような体験だと言われている。それは大げさな表現ではなく、実際にこの犬と暮らす人たちのSNSや最新のブログを見ていると、そのダイナミックな毎日が伝わってくる。
シベリアンハスキーは、シベリアの先住民族たちと群れを成し、猟犬やソリ犬として暮らしてきたことから、優れた判断力と高い社会性をもつ。飼い主をはじめ、子供や他の動物とのコミュニケーションも上手にとることができるので、多頭飼いにおすすめの犬種だ。
しつけが難しいと言われることもあるが、ほかの人や犬に対して友好的なので、愛情を注ぎ信頼関係を築ければ、ほかの犬種と比較してとくに難しくはないだろう。シベリアンハスキーとの信頼構築で大切なのは、しっかりと運動させてあげること。十分な運動量を確保し、心身を満たしてあげることで、しつけをおこないやすくなる。
あの夕暮れの公園で出会ったハスキー犬は、飼い主の女性がリードを引くたびに、ちらりとこちらを振り返っていた。まるで「もう少し話せたのに」と言いたげな、そんな目で。青い瞳に夕陽が映り込んで、一瞬だけオレンジ色に染まった。その光景は、今もどこかに残っている。
ハスキー犬はどんな犬か、と問われたら——野性的で美しく、愛情深くて少し頑固で、一緒に走れる体力さえあれば、これ以上ない相棒になる犬だと、そう答えたい。
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