窓から差し込む朝日が、リビングの床を優しく照らす頃、いつものように真っ先に目を覚ますのは、我が家のハスキー犬のルナです。彼女の大きな青い瞳が、まだ眠そうな私の顔をじっと見つめています。時計は六時を指していました。
「おはよう、ルナ」と声をかけると、しっぽを大きく振って応えてくれます。主人と5歳の娘はまだ夢の中。休日の朝の静けさが、家中を包んでいます。
ルナが我が家にやってきたのは、3年前のことでした。保護犬として出会った彼女は、当時とても臆病で、人を警戒していました。でも不思議なことに、娘のミサキだけは最初から受け入れていたのです。まだ2歳だった娘が、おそるおそるルナに近づき、小さな手を差し出した時の光景は、今でも鮮明に覚えています。
キッチンでコーヒーを入れながら、窓の外を見やると、庭には朝露が光っています。ルナは既に玄関で待機していて、朝の散歩の時間を今か今かと待っているようです。首輪を手に取ると、嬉しそうに立ち上がり、しっぽを左右に大きく振ります。
散歩コースは、いつもの公園まで。朝もやの中、ルナは優雅に歩を進めます。シベリアンハスキーの特徴である凛とした姿は、見る人の目を惹きつけずにはいられません。時々立ち止まっては、草の匂いを嗅いだり、鳥の声に耳を傾けたりする彼女の仕草には、野生の血が垣間見えます。
帰宅すると、主人と娘が目を覚ましていました。「おかえりなさい!」という娘の元気な声に、ルナは尻尾を振りながら駆け寄ります。休日の朝食は、家族全員でテーブルを囲むのが習慣です。ルナも自分の定位置で、私たちを見守っています。
「パパ、今日は公園に行こうよ!」娘の提案に、主人はにっこりと笑顔で頷きます。ルナの耳が、「公園」という言葉に反応して、ピンと立ちます。彼女にとっても、家族でのお出かけは特別な時間なのです。
準備を整えて出発する頃には、すっかり陽も高くなっていました。週末の公園には、家族連れや犬の散歩をする人々が集まっています。ルナは穏やかな性格で、他の犬たちとも上手に遊びます。特に小型犬に対しては、自分のサイズを理解しているかのように、優しく接するのです。
芝生の上で娘が投げるボールを、ルナは軽やかに追いかけます。時折、わざと取り損ねたふりをして、娘を喜ばせることもあります。そんな気遣いができる賢さも、ハスキーの魅力の一つです。主人は、そんな2人の姿をカメラに収めています。
昼食は公園でピクニック。手作りのサンドイッチを広げると、ルナも自分の専用マットの上で、おとなしく待っています。食事の後は、木陰で休憩。春の柔らかな風が、私たち家族を包み込みます。
ルナは、私たちの傍らで微睡んでいます。大きな体を丸めて、時々耳をピクッと動かす姿は、まるで大きなぬいぐるみのよう。娘は、そっとルナの背中に寄り添って、一緒にお昼寝を始めました。
夕方になり、家に戻る頃。疲れた様子の娘を、主人が背負って歩きます。ルナは、いつもより少しゆっくりとしたペースで、私たちの横を歩いています。彼女の毛並みが、夕陽に照らされて輝いています。
家に着くと、娘はすぐにソファーで眠ってしまいました。ルナは、そんな娘の足元で見張り番をしています。主人が「本当に良い子だね」と、ルナの頭を撫でながら言います。確かに、彼女は私たち家族にとって、かけがえのない存在になっていました。
夕食の準備をしていると、キッチンにルナがやってきます。包丁を使う音や、野菜を切る音に興味津々の様子。でも決して邪魔をすることはなく、少し離れた場所から、じっと見守っています。
食事を終え、入浴を済ませた後は、家族の団らんの時間。テレビを見たり、絵本を読んだり。ルナは、私たちの間に座り、時々誰かの手を舐めたり、頭を撫でてもらったりしながら、幸せそうな表情を見せます。
就寝時間が近づくと、ルナは自分のベッドに向かいます。でも必ず、家族全員の様子を確認してから休むのです。最後に私の部屋に顔を出し、安心したように自分の寝床に戻っていく姿に、母性のようなものを感じます。
夜更けに目が覚めることがあっても、ルナの寝息を聞くと、不思議と心が落ち着きます。彼女が家族の一員になってから、家の中は一層温かみを増したように感じます。
時には、ハスキー特有の高い知能と活発さゆえに、困ることもあります。庭に穴を掘ったり、興奮すると大きな声で鳴いたり。でも、そんな個性も含めて、私たちはルナを愛しています。
季節が移り変わり、娘が成長していく中で、ルナもまた、少しずつ年を重ねています。彼女の瞳に宿る優しさは、日々深みを増していくようです。そして、私たち家族の絆も、彼女の存在によってより強くなっていることを実感します。
今日も、家族の眠りを見守るように、ルナは静かに息をしています。明日もまた、彼女と共に新しい一日が始まります。私たちの大切な家族の一員として、これからもたくさんの思い出を作っていけることを、心から幸せに感じています。
窓の外では、満月が優しく輝いています。ルナという名前が、こんなにも彼女に相応しかったことを、改めて実感する夜です。おやすみ、私たちの愛するハスキー。また明日も、素敵な一日を過ごそうね。
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