ハスキー犬と歩いた、あの朝のことをまだ覚えている

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夏の朝、六時を少し回ったころ。空はすでに青く、雲ひとつない。いい天気だと思った。思っただけで、体はまだ半分眠っていた。それでもリードを手に取ると、うちのハスキー犬・ソルは玄関先でくるりと一回転した。嬉しいときの、あの子なりの挨拶だ。

シベリアンハスキーは体を動かすことを喜び、散歩やドッグランで走り回るのが大好きな犬種だ。
頭ではわかっていても、毎朝あれほど全力で喜ばれると、こちらも目が覚める。眠気などというものは、ソルの尻尾の動きの前にあっさり負ける。

家を出てすぐ、アスファルトの上に朝の光が薄く広がっていた。まだ熱を持つ前の、ひんやりした空気。八月のくせに、この時間だけは少しだけ優しい。ソルの白と灰色の毛が、朝日を受けてふわりと光る。触れると驚くほど柔らかくて、ほんの少しだけひんやりしている。子どもの頃、近所で飼われていた柴犬の毛とはまるで違う、あの独特の手触り。初めて触ったとき、思わず「え、これ犬?」と声に出してしまったのを今でも思い出す。

シベリアンハスキーは被毛がボリューミーで暑さが苦手な犬種だ。そのため散歩をする時間帯は、夏場は朝晩を心がけるのがよい。
だから我が家の散歩は、必ず夜明けとともに始まる。ソルにとっても、私にとっても、あの時間帯だけが本当の意味でいい天気と呼べる瞬間なのかもしれない。

いつもの川沿いのルートを歩いていると、ソルが急に立ち止まった。鼻をひくひくさせて、何かの匂いを追っている。草むらの奥、たぶんネコかタヌキの気配。私はリードを少し緩めて、その時間を待った。川の水音が、ちいさく、でも確かに聞こえていた。ゆるやかな流れの音と、どこかの家から漂ってくるコーヒーの香り。誰かの朝が、すぐそこで始まっている。

シベリアンハスキーの散歩にかける時間は、一回あたり一時間以上が目安だ。もともとソリを引く犬として活躍していた犬種であることから、筋肉量もスタミナも多い傾向にある。
だからソルと歩くと、いつも気づいたら遠くまで来ている。今朝も、気づけば「ミドリ野公園」の端まで来ていた。地図アプリで見ると、家から二キロ近い。ソルはまだ全然平気な顔をしているが、私の足はそろそろ主張を始めていた。

公園の木陰に入ると、温度がぐっと下がった気がした。葉の隙間から差し込む光が、地面にまだら模様を作っている。ソルはその光の中を歩きながら、ときどき振り返って私を見る。「まだ来る?」と言っているような、あの目。青みがかった瞳が、朝の光の中でいっそう透き通って見えた。

ふと思い出したのは、幼い頃に父と行った早朝の釣りのことだ。あのときも、こんなふうに眠い目をこすりながら外に出て、気づいたら空の青さに見とれていた。大人になっても、いい天気の朝にはあの感覚が戻ってくる。ソルと歩いていると、特にそれが強い。

散歩は気分転換になり、飼い主さんとの絆を築くきっかけにもなる。
それは本当だと思う。ソルと歩いた時間の分だけ、私たちの間には言葉にならない何かが積み重なっている。帰り道、ソルはいつもより少しだけゆっくり歩く。満足した証拠だ。リードを持つ手に、ゆったりとした重みが伝わってくる。

家に戻ると、ソルは水をごくごく飲んで、そのままひんやりした玄関タイルの上に大の字になった。完全に、仕事を終えた顔をしている。私はその横に座って、冷えた麦茶を一口飲んだ。

シベリアンハスキーは強い運動本能と高い持久力が特徴だ。
それでも、こうして朝の散歩を終えたソルを見ていると、どこか穏やかで、やわらかい。走ることと、休むことを、この犬はちゃんと知っている。

今日もいい天気だった。ハスキー犬と歩いた朝は、いつもそうだ。
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