ハスキー犬と過ごす夏の午後――友人たちと一緒に遊ぶ、特別でもない、でも忘れたくない一日

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八月の午後というのは、どうしてこんなに時間の流れ方がおかしいのだろう。太陽がまだ高い位置にあるのに、影はすでに長くなりかけていて、風だけが少し先の季節の匂いを運んでくる。庭の端に置いたウッドデッキチェアに腰かけながら、わたしはそんなことをぼんやりと考えていた。

友人たちが来たのは、午後二時を少し回ったころだった。三人で連れ立って、そのうちの一人――ミサキが、大きな白と灰色の塊を引きずるようにして玄関をくぐってきた。ハスキー犬のルーク。体重三十キロ近い、二歳になったばかりのシベリアンハスキーだ。

オオカミを思わせる精悍な顔立ちに、頼りがいのある容姿。
でも、ルークはその見た目とはまったく裏腹に、玄関マットの上で仰向けになってお腹を見せた。誰かにでも撫でてほしいのか、前足をぱたぱたさせながら。
見た目がツンで、行動がデレ――まさに「ツンデレ」というやつだ。

友人のカナエがアイスコーヒーの入ったグラスをわたしの手元にそっと置いてくれた。氷がぶつかる音が、やけに涼しく聞こえた。ガラスの外側には水滴がびっしりついていて、指で触れると思ったより冷たくて、少しだけ驚いた。夏の午後の感触というのは、こういう細かいところに宿っている。

一緒に遊ぶといっても、最初のうちはみんなてんでばらばらだった。ミサキはルークのリードを解きながら「待って待って、まだ準備できてない」と笑い、もう一人の友人ユウタはスマホを構えたまま「いいシーンが撮れそう」と独り言を言っていた。ルークはそんな人間の事情など知ったことかとばかりに、庭の隅の草むらに鼻を突っ込んでいた。

わたしには、子どもの頃に犬を飼っていた記憶がある。ミニチュアダックスフントで、名前はムギ。散歩のたびに引っ張られて転びそうになっていたのを覚えている。あの頃と比べると、ルークはもっとずっと力が強い。
シベリアンハスキーはそり犬だったため、運動欲求が強くスタミナがある。
ミサキが「ちょっと目を離すと消えるんだよね」と笑っていたのも、なるほど納得だ。

庭に敷いたレジャーシートの上で、わたしたちはしばらくルークと一緒に遊んだ。ボールを投げると、ルークは一瞬だけ追いかけて、途中でなぜか立ち止まり、振り返ってこちらをじっと見た。取ってきてくれるわけでも、諦めるわけでもなく、ただじっと見ている。心の中で「どっちやねん」とつっこんだのは、たぶんわたしだけではないはずだ。

散歩をしていると、つい気になってしまう犬に出会うことがある
という感覚、わたしにもわかる気がする。ルークはそういう犬だ。一度目が合うと、なぜかしばらく離れられなくなる。あの青みがかった瞳に、どこか遠い場所の光が宿っているような気がして。

日が傾きはじめると、庭の空気がすこし変わった。草の匂いが濃くなって、遠くから虫の声が聞こえはじめた。カナエが「そろそろ涼しくなってきたね」とつぶやきながら、ルークの背中をゆっくり撫でた。ルークは目を細めて、そのまましばらく動かなかった。

こういう時間を、なんと呼べばいいのかわからない。特別なことは何もなかった。ハスキー犬と友人たちと、八月の庭と、冷たいコーヒーと。それだけだ。でも、帰り際にミサキが「また来てもいい?」と聞いたとき、わたしはすぐに「もちろん」と答えていた。

架空のインテリアブランド「ノルテ・フィールド」が出しているアウトドアラグをシートの代わりに使っていたのだけれど、ルークにしっかり端を噛まれた。それだけが、今日唯一の誤算だった。
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