
ハスキー犬と一緒に散歩をすると、なぜかいつもより世界が広く見える。それは大げさな話でも、詩的な比喩でもなくて、実際にそう感じてしまうのだから仕方がない。
うちのハスキー犬・ソラは、朝6時になると決まって私の布団の端を鼻でつついてくる。起きてくれ、という意思表示だ。まだ薄暗い夏の早朝、カーテンの隙間からオレンジ色の光がわずかに差し込んでいて、その光の中にソラの白と灰色の毛がふわりと浮かび上がる。その瞬間だけはどんなに眠くても、「行くか」という気持ちになれる。
シベリアンハスキーはそり犬として活躍していた歴史を持つ犬種で、走ることが大好きで運動量がとても多い。日頃から散歩へ連れていくことが非常に大切だ。
これはただの義務ではなく、ソラにとっては生きることそのものに近いのかもしれない、と最近になって思うようになった。
散歩のコツとして私が最初に学んだのは、「ルートを固定しすぎないこと」だった。毎日同じ道を歩いていた頃、ソラはある日突然、見慣れた電柱の前で動かなくなった。理由は今もわからない。ただ、その日から少しだけルートを変えるようにしたら、ソラの鼻がぴくぴくと忙しそうに動き始めた。新しい匂い、新しい風、新しい地面の感触——そういうものが、ハスキー犬の散歩をもっと豊かにするのだと気づいた。
愛犬の気分に合わせたルートやペースを選ぶことが、ストレス軽減につながる。
近所に「ノーストレイル公園」という、地元の人しか知らない小さな緑地がある。正式な名前ではなく、近隣の犬友達がいつの間にかそう呼び始めた場所だ。砂利道と芝生が混在していて、朝露が残る時間帯に歩くと、ソラの足音がじゃり、じゃりと小気味よく響く。その音が好きで、私はわざわざ遠回りをしてでもここを通るようにしている。
歩くだけの散歩であれば、少なくとも1日2回、1時間ずつ散歩させることが好ましく、1回あたり1〜2kmを歩くのがベストとされている。
最初にこれを読んだとき、正直「そんなに?」と思った。でも実際にやってみると、散歩を終えて帰宅したソラが満足そうに水を飲む姿を見るたびに、この時間は絶対に削れないと確信する。
子どもの頃、実家で柴犬を飼っていた。散歩は父の担当で、私はたまについていくだけだった。父は無口な人で、歩きながら一言も喋らないこともあった。でも犬と並んで歩くときの父の背中は、どこかやわらかかった。ハスキーとの散歩を続けるようになって、あの背中の意味がようやくわかった気がする。
散歩中のコミュニケーションが重要で、犬との触れ合いを大切にすることで信頼関係が築かれる。
ソラとの散歩でも、それは同じだ。リードを持つ手に伝わるテンション、立ち止まるタイミング、振り返ったときの目の合い方——言葉のないやり取りの中に、確かなものが積み重なっていく。
ひとつ、笑えるエピソードがある。ある朝、張り切って新しいスニーカーを履いて出かけたら、ソラが水たまりに突進してずぶ濡れにされた。靴の中がぐちゃぐちゃになりながら、「なんで今日に限って……」と心の中でひとりツッコんだ。ソラはといえば、泥だらけの前足でこちらを見上げ、しっぽを振っていた。まったく、悪びれる様子が一切ない。
ハスキーは人にも犬にもフレンドリーで、散歩中に見知らぬ人と話す機会も自然と増えていく。
ソラを連れているとよく声をかけられる。「ハスキーって初めて見た」「目がきれいですね」——そういう会話が、私の一日を少しだけ明るくしてくれる。
シベリアンハスキーはそり犬としての歴史を持ち、強い運動本能と高い持久力が特徴の犬種だ。
だからこそ、散歩はただの「運動タイム」ではない。ソラにとっては本能が呼び覚まされる時間であり、私にとっては日常の中にある小さな冒険だ。
夏の散歩は、早朝か夕方以降に限る。アスファルトの熱が犬の肉球を傷めるからだ。今朝も、まだ涼しさが残る6時台に出発して、ノーストレイル公園の芝の上をゆっくり歩いた。草の匂いと土の湿り気が足元から伝わってきて、ソラは何かを嗅ぎつけたのか、鼻を地面にぴたりとくっつけて動かなくなった。私はそのまま待つ。急かさない。それが、この子との散歩で覚えた、いちばん大切なコツかもしれない。
ハスキー犬との散歩は、うまくやろうとするより、一緒に楽しもうとするほうがずっとうまくいく。そのことを、ソラは毎朝、泥だらけの足で教えてくれている。
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