
九月の朝、空気がほんの少しだけ涼しくなってきた。夏の名残をひきずりながら、それでも風はどこか秋の気配を帯びていて、木の葉がかすかに揺れるたびに乾いた香りが漂ってくる。そんな朝に、わたしはリードを手に玄関を出た。隣でルナが、青い瞳をきらめかせながら尻尾を激しく振っている。ハスキー犬というのはいつも、散歩の前からすでに全力だ。
ルナと暮らし始めて二年が経つ。
シベリアンハスキーはそり犬としての歴史を持つ犬種で、強い運動本能と高い持久力が特徴だ。
だから最初のころ、わたしは毎朝ヘトヘトになっていた。ルナが引っ張る力は想像以上で、リードを握る手のひらに赤い跡が残ることも珍しくなかった。散歩というより、引きずられているだけの日々。あのころは正直、少し途方に暮れていた。
転機になったのは、近所の「ノルディカ・ドッグパーク」に通い始めたことだった。そこで出会ったベテランのハスキー飼いの女性に、ひとつのコツを教わった。「一週間トータルで考えるといいよ」と彼女は言った。
毎日完璧にこなそうと思わず、一週間全体でバランスを取ることが、ハスキーとうまく付き合う飼い方のコツだ。
平日は少し短めでも、週末にたっぷり歩けばいい。その言葉はじわじわと、肩の力を抜いてくれた。
ハスキーは十分な運動や刺激がないとストレスを感じやすく、問題行動の原因となりやすい。
それはわかっている。でも逆に言えば、きちんと体を動かしてあげれば、ハスキー犬はびっくりするほど穏やかになる。ルナがそうだった。散歩から帰ったあとのルナは、リビングのラグの上にどさりと倒れ込んで、目を細めながらうとうとする。そのとき横顔が、子どもみたいにやわらかくなる。
シベリアンハスキーは家族以外の人や犬に対しても積極的に交流しようとする、友好的で好奇心旺盛な犬だ。
だから散歩中、ルナはいつも忙しい。道端の草をくんくん嗅ぎ、すれ違う犬に鼻先を近づけ、小さな子どもに気づけば尻尾をぐるぐる回す。その様子を見ていると、こちらまで世界が少し広くなったような気持ちになる。
そういえば今朝、ちょっとした出来事があった。ルナが突然立ち止まって、道端に落ちていた小さな枯れ葉を、真剣な顔でじっと見つめ始めたのだ。一分近く、微動だにしない。何かいる?と思ってわたしも覗き込んだけれど、ただの枯れ葉だった。ルナよ、そんなに真剣に見なくていい。心の中でそっとツッコんだ。
ハスキーは「なぜそれをする必要があるの?」と自分なりに考えてから行動する傾向がある。
そのくせ枯れ葉には五分間向き合う。それがハスキーという生き物の、愛おしいところだとわたしは思っている。
散歩のコツとして、もうひとつ大切にしていることがある。それは「引っ張り返さないこと」だ。
ハスキーとの健全な関係を築くには、一貫した訓練と明確なルールを提供することが鍵になる。
力で対抗しようとするのではなく、立ち止まって待つ。ルナがリードの張りを緩めた瞬間に、また歩き始める。これを繰り返すうちに、ルナは少しずつ「隣を歩く」ことを覚えていった。
九月の朝の光は、まだ夏の角を残しながらも、どこかやさしい。アスファルトに伸びるルナの影が長くて、わたしの影と並んで揺れている。ふたつの影がそろって同じ方向を向いているとき、散歩しているのか、散歩させられているのか、もうどちらでもいいような気がしてくる。
ハスキー犬との散歩は、うまくいかない日もある。引っ張られる日も、立ち止まって動かない日も、謎の枯れ葉と対峙する日もある。でも、そういう小さなズレのひとつひとつが、いつか愛しい記憶になっていく。今日もルナと並んで、秋の入口を歩いていく。それだけで、十分だと思っている。
#ハスキー犬
#犬好きな人と繋がりたい
#わんこと遊ぶ
#友達と休日
#犬のいる暮らし
#ハスキーのいる生活
#犬とお出かけ
#もふもふ時間
#仲良しグループ
#癒しのひととき
#日刊ブログメーカー

コメント