
夏の終わりかけた午後、縁側から差し込む光がリビングの床に長く伸びていた。扇風機がゆっくりと首を振るたびに、白とグレーの毛がふわりとなびく。うちのハスキー犬、ルーカは、そのとき三歳の娘の隣で、ひどく満足そうに目を細めていた。
ハスキーを迎えるまで、正直なところ不安のほうが大きかった。
体高50〜60cm・体重20〜27kgと大型で、1日2〜3時間の運動を欠かせない
という話を読んだとき、わたしは思わず検索タブを閉じかけた。でも、なにかが引っかかって、もう少しだけ調べ続けた。そうしてたどり着いたのが、ハスキーの「本当の性格」だった。
クールな見た目とは裏腹の陽気で甘えん坊な性格。そんなギャップが魅力のシベリアン・ハスキーは、世界中で愛されている犬種だ。
それを知ったとき、なんだか肩の力が抜けた気がした。
ルーカがうちに来たのは、まだ春の匂いが残る四月の朝だった。ペットショップではなく、知人の紹介で訪ねた「ノルディカ・ドッグファーム」という小さなブリーダーのもとで生まれた子で、会った瞬間、青みがかった瞳でまっすぐこちらを見上げてきた。その目に、なにか懐かしいものを感じた。子どもの頃、実家で飼っていた柴犬が死んだ日の夜、泣きながら眺めた星空の色に、どこか似ていた。
最初の一週間は、やはりてんやわんやだった。夜中に鳴く、ソファの端を噛む、娘が積み上げたブロックを鼻先でぐいっと崩す。
ハスキーは群れで生活していたこともあって、めちゃくちゃ寂しがり屋だ。姿が見えなくなったらすぐに鳴く。
それがわかってからは、なるべく同じ部屋で過ごすようにした。
ある夜、夫がキッチンで麦茶を注いでリビングに戻ってきたとき、ルーカがそっと立ち上がって夫の手元に顔を寄せた。カップを渡そうとした夫の腕に、鼻先をぐりぐりと押しつけて。夫は「渡せない」と苦笑いしながら、空いた手でルーカの耳の後ろをかいてやった。麦茶は結局、テーブルに置かれるまでに三分かかった。
シベリアンハスキーは、家族以外の人や犬に対しても積極的に交流しようとする友好的な犬だ。
それは本当にそのとおりで、ルーカは散歩中に出会う子どもにも、近所のお年寄りにも、尻尾を振りながら近づいていく。
人懐っこく甘えん坊で、初対面の人や他の犬にも友好的で、社交性が高い犬種だ。
番犬には向かないかもしれないけれど、わたしたち家族にとってはそれがちょうどよかった。
娘はルーカのことを「おおきいぬいぐるみ」と呼ぶ。ふわふわの毛に顔をうずめて、「あったかい」とつぶやきながらうとうとする姿は、何度見ても胸のどこかがじんわりする。
狼のような見た目が特徴のシベリアンハスキーは、その見た目とは裏腹に落ち着きのある性格だ。
その穏やかさが、小さな子どもとの暮らしにこれほど合うとは、飼う前には想像していなかった。
朝の散歩から帰ってきたルーカは、玄関で一度ぶるぶると体を振ってから、決まってわたしの足元に来る。靴を脱ぐ前に、鼻先でつついてくる。「おかえり」なのか「ごはんまだ?」なのか、たぶん両方なのだろうと思いながら、しゃがんで額を合わせる。夏の朝の外気をまとった毛は、少しだけひんやりしていて、草の匂いがする。
シベリアンハスキーは見た目に反して性格は優しくて友好的で、飼い主に対して愛情深いので、素晴らしいパートナーになってくれる。
この言葉を最初に読んだとき、半信半疑だったわたしは、今ならはっきり頷ける。
ハスキー犬との暮らしは、決して楽ではない。抜け毛は多いし、運動量も必要だし、ひとりにしておける時間にも限りがある。でも、それ以上のものをルーカはこの家族にくれている。娘の笑い声と、夫の苦笑いと、草の匂いのする朝と。穏やかで、少しだけ騒がしくて、それがとても、いい。
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