ハスキーがいる、穏やかな朝のこと。家族になるって、こういうことだと思った。

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十月の終わり、朝の空気がひんやりと頬をなでる季節になった。窓の外には薄い霧がかかっていて、庭の金木犀はもうほとんど散ってしまっていた。その朝、わたしは台所でお湯を沸かしながら、ふと思い出していた。ハスキーを迎える前、わたしがどれほど不安だったかを。

あれはちょうど一年前のことだ。

「本当に飼えるのかな」と、何度も夫に言った。ハスキー犬という名前を聞いただけで、頭の中にはオオカミのような精悍な顔が浮かんで、なんだか怖い犬なのではないかと思っていた。実際、
シベリアンハスキーは狼に似た精悍な顔立ちやクールな毛色が印象的だが、その性格は非常に穏やかで友好的だ。外見から「気難しい」「攻撃的」と思われがちだが、実際は家族や他のペットとも仲良くできる社交的な性格が多く見られる。
そのことを知ったのは、ずいぶんあとのことだった。

迎えた日、生後三ヶ月のシロ(勝手につけた名前だ)は、玄関に入った瞬間、まるで何年もここにいたかのように、家の中をくんくんと嗅ぎ回った。娘の麦(むぎ、当時四歳)は最初こそ固まっていたが、シロが尻尾をぶんぶん振りながら近づいてきたとき、「わあ」と声を上げて、そのままシロの背中に顔をうずめた。その瞬間の温かさと、やわらかい毛の感触が、今でも手のひらに残っている気がする。

ハスキーは群れで生活してきた歴史があるため、家族全員を自分の仲間と認識する。子どもに対しても穏やかで忍耐強く接することが多く、家庭犬として安心感を与えてくれる存在だ。
麦がシロの耳を引っ張っても(やめなさい、と言っているのに)、シロは怒るどころか、むしろ嬉しそうに舌を出して顔を舐め返す。そのたびに麦は大笑いして、わたしは苦笑いしながら「ほら、やめなさいって」と言う。それが、わたしたちの日常になった。

夫は毎朝シロとジョギングに出かける。帰ってくると、シロは玄関で大きな体をどっかりと横にして、はあはあと息を整えている。そのとき夫が持ってくるコーヒーの香りが台所まで漂ってきて、わたしはそれを合図にカップを二つ用意する。ある朝、夫がカップを受け取りながら「シロ、今日は走るのさぼろうとしてた」とぼそっと言った。どうやらシロは途中でぺたりと座り込み、「もう帰ろう」という顔をしていたらしい。かなりの運動量を誇るはずのハスキーが、寒い朝にさぼろうとしていた。なんだか少し、親近感が湧いた。

シベリアンハスキーは、人にも他犬にもフレンドリーであり、そり犬の歴史に培われた社会性の高い性格を持つ。飼い主には従順で、慣れやすく家庭犬としての素質がある。
それはたしかにそうで、シロは近所の散歩仲間にも、公園で遊ぶ子どもたちにも、誰にでもしっぽを振る。「ハスキーって怖くないんですね」と言われるたびに、わたしは少し誇らしい気持ちになる。

朝の散歩はお父さん、夕方はお母さん、平日の遊び相手は子どもたち、というように、無理のない範囲で分担すれば、誰かに負担が偏ることもない。
うちもそうなっている。わたしは夕方、麦と一緒に近所の「ノルテ公園」まで歩く。シロはリードをぐいぐい引っ張りながら、それでも麦のペースに合わせるように、ときどきふり返る。その横顔が、なんとも言えずやさしい。

飼う前に心配していたことは、今ではほとんど笑い話になった。「大型犬は大変そう」「しつけが難しそう」「子どもと合うかな」。全部、杞憂だったとは言い切れないけれど、それ以上のものをシロはくれている。家族という言葉の意味が、少し変わった気がする。シロが来てから、この家はどこか明るくなった。朝の光の差し込み方も、夕方の台所の空気も、なんとなく前より温かい。

ハスキー犬を迎えることを考えているあなたへ。怖くないよ、と伝えたい。むしろ、あなたの家族のことをちゃんと好きになってくれる犬だから。
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