ハスキーと暮らす、穏やかな朝のこと──家族に迎えてわかった、人懐こさの正体

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秋が深まるころ、我が家のリビングには毎朝おなじ光景が広がるようになった。カーテンの隙間から差し込む薄い朝の光が、フローリングの上に長く伸びて、その先に白と灰色の大きな塊がひとつ、のびのびと寝転がっている。うちのハスキー犬、ユキだ。

ユキが来たのは、十月の初旬だった。朝晩の空気がひんやりとしはじめ、金木犀の香りがどこからともなく漂ってくる、あの季節。主人が「一度だけ見に行くだけ」と言ってブリーダーのもとを訪ねた日、帰ってきたときにはすでに目が据わっていた。「この子だ」と。わたしは内心、「見るだけって言ったじゃないか」と思ったが、それを口にする間もなく、ユキはわたしの足元にちょこんと座って、澄んだ青い瞳でじっとこちらを見上げてきた。その瞬間に、もう負けていた。

ハスキーを迎えた家庭の約8割が「家族や他のペットともすぐに打ち解けた」と回答している
というデータがある。正直、迎える前はそんな話を信じていなかった。オオカミのような顔立ち、鋭い目、大型犬という響き。怖くはないのかと、何度も自分に問いかけた。でも実際のユキは、
クールな見た目に反して、家族に対して非常に愛情深く、甘えん坊な一面を持っていた。
初対面の人にも尻尾を振り、近所の子どもたちには名前まで覚えられた。番犬にはまったく向かない。

三歳の息子、蓮(れん)はユキのことを「ゆきゅ」と呼んでいた。うまく発音できないのだ。それでもユキは毎朝、蓮が起きてくるとすぐそばに寄っていき、大きな体を小さく丸めるようにして隣に座る。
小さな子どもにも優しい性格で、すぐに家族の一員として馴染める
というのは本当で、ユキと蓮の間には、言葉のいらない何かが最初から流れていた。蓮がぐずって泣いているとき、ユキは静かに近づいて、鼻先をそっと蓮の手に当てる。それだけで、蓮は泣き止む。主人もわたしも、その光景を何度見ても慣れない。

「家族みんなが協力し合うチームとして接する方が、ハスキーも喜んで学んでくれる」
という言葉を、どこかで読んだことがある。確かにそうだと思う。我が家では、しつけのルールを主人とわたしで揃えるようにした。ユキは賢いから、ちょっとした矛盾をすぐに見抜く。主人がだめと言ったことを、わたしがこっそり許してしまった日には、翌日からユキがわたしにだけ甘えてくる。かわいいけれど、ちょっと困る。

散歩は毎朝、主人が担当している。早朝六時、まだ空が白みはじめたころ、ふたりは近くの「緑野川沿いの遊歩道」を歩く。わたしはその時間、台所でお湯を沸かしながら窓越しに見送る。冷えた朝の空気の中、ユキの息が白く立ち上るのが見えることがある。主人の革靴の音と、ユキの爪がアスファルトを叩く音が、遠ざかっていく。その音が消えると、台所がしんとなる。

シベリアンハスキーはそり犬だったため、運動欲求が強くスタミナがある。エネルギーが充分に消費されないとストレスをためてしまうことがあるので、毎日朝晩一時間程度の散歩を欠かさないようにしたい。
それでも、散歩から戻ったユキが満足そうに尻尾を揺らす姿を見ると、疲れよりも充実感のほうが大きいと主人はいつも言う。

子どものころ、わたしは犬が苦手だった。近所の大型犬に吠えられて以来、大きな犬の前では足がすくんでしまっていた。だからユキを迎えるとき、一番不安だったのは実はわたし自身だったかもしれない。でも今、ユキの背中に手を置くたびに感じる、あの厚くて温かい毛の感触が、その記憶をゆっくりと上書きしていく。

夕方、蓮がお昼寝から目覚めると、ユキはいつも先に気づいている。主人がソファで本を読みながらうとうとしているそばで、ユキは蓮の足音を聞きつけ、耳をぴんと立てる。わたしが淹れたほうじ茶の湯気が、夕暮れの光の中でゆらゆらと揺れていた。

ハスキー犬は見た目の迫力に反して、驚くほど人懐こく、穏やかで、家族思いの犬種だ。
これからハスキーを迎えることを考えている人に、わたしが伝えたいのはただそれだけかもしれない。難しいことも、たしかにある。でも、この家族の時間は、ユキなしでは想像できない。穏やかな秋の夕暮れに、白い毛のかたまりと、小さな子どもと、うとうとする主人と、ほうじ茶の香り。それが今の、わたしたちの日常だ。
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