ハスキー犬と過ごした、あの午後のこと——友人たちと一緒に遊んだ秋の記憶

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九月の午後というのは、不思議な光をしている。夏の熱がまだ地面の奥に残っているのに、空気の端っこだけが少し透き通っていて、「もうすぐ秋だよ」とひっそり告げてくるような、そんな時間帯だった。縁側に腰を下ろしながら、私はぼんやりとそのことを考えていた。庭の向こうから、友人たちの笑い声が聞こえてくる。そして、その笑い声のあいだに、もう一つの気配がある。ハスキー犬の、低くてやわらかい息遣い。

友人の一人、さちこが連れてきたのは、シロという名のシベリアンハスキーだった。三歳になったばかりの男の子で、青みがかった灰色の瞳を持っている。最初に庭に入ってきたとき、シロはまっすぐこちらへ歩いてきて、私の膝に鼻先をぐいっと押しつけた。冷たくて、少し湿っていて、その感触がなんだか懐かしかった。子どもの頃、近所の駄菓子屋の前に繋がれていた雑種犬に似た感じ。あの犬も、いつも誰かの手をそっと舐めていた。

シロが庭に放たれると、場の空気がいっきに変わった。友人たちが一緒に遊ぼうと声を上げ、ボールを持ち出して、あちこちへ投げる。シロはものすごい勢いで走る。ハスキー犬はもともと犬ぞりを引いてきた犬種だから、そのスタミナは本物だ。友人の健太が「疲れさせてやる」と意気込んで投げ続けたのだが、十五分後に音を上げたのは健太のほうだった。シロは涼しい顔で、まだボールをくわえて戻ってくる。(心の中で「どっちが犬だ」とつぶやいたのは、内緒にしておく。)

草の上に腰を下ろすと、九月の日差しがじんわりと肩に乗ってくる。風が吹くたびに、庭の金木犀がほんのり甘い香りを運んでくる。まだ咲き始めたばかりで、においは淡い。それでも確かに、秋の匂いだった。さちこが魔法瓶から注いでくれたのは「ソレイユブレンド」という名前のハーブティーで、彼女が最近通っているという小さなお茶の店のオリジナルだという。金色に透き通った液体が、白いカップの中でゆらゆらと揺れていた。受け取るとき、カップがほんのり温かくて、その温度が指先から全身にゆっくりと広がった。

シロはひとしきり遊んだあと、さちこの隣にどっかりと座った。大きな体を無造作に預けるようにして、目を細める。さちこが自然な仕草でシロの首元を撫でると、シロはふうっと長い息をついた。その音が、なんとも満足そうで、その場にいた全員が少し黙った。言葉より先に、何かが伝わってくる瞬間というのが、ある。

ハスキー犬と一緒に遊ぶというのは、思っていた以上に全身を使う体験だ。走る、笑う、転びそうになる。でもそれ以上に、ただそこにいることの豊かさを教えてもらう気がする。シロの存在が、友人たちの距離をすっと縮めていた。普段はなかなか言えない話が、なぜかするすると口から出てくる。犬というのは、そういう場を作るのが得意なのかもしれない。

日が傾きはじめると、庭の影が長くなった。シロはもう眠そうで、芝生の上に体を伸ばしてうとうとしている。その寝顔が、どこか誇らしげで、どこか無防備で、見ているとこちらまで力が抜けてくる。友人たちの声も、少しずつゆっくりになっていった。

この午後のことを、きっとしばらく忘れないと思う。ハスキー犬のシロと、友人たちと、金木犀の香りと、ソレイユブレンドの温度と。それから、健太が完敗した顔も。九月の光の中に、全部が溶け込んでいた。
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