ハスキーがやってきた夏の午後|友人たちと一緒に遊ぶ、とびきり特別な一日

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玄関のドアを開けた瞬間、むわっとした七月の熱気が押し寄せてきた。午後二時をまわったばかりの光は、縁側のガラス越しにリビングの床をまだら模様に焼いていて、扇風機の風がレースカーテンをゆっくりと揺らしていた。そんなぼんやりした空気を一瞬で塗り替えたのは、友人の麻衣が連れてきた一頭のハスキー犬だった。

名前はユキ。シルバーとホワイトの被毛が混ざり合った、どこか神話的な美しさを持つ三歳のメスだ。
シベリアンハスキーは鋭い目つきと精悍な外見から「クールで従順な犬」というイメージを持たれやすいが、
ユキはそのイメージをひょいと軽々と踏み越えてくる。玄関に入るなり、私の足元にぐりぐりと鼻先を押しつけてきた。冷たくて湿った感触。思わず笑いがこぼれた。

友人たちが続々と集まってきた。麻衣、それから大学時代からの付き合いの賢司と、去年から同じ町に越してきた咲子。四人が揃うのは半年ぶりくらいだろうか。
ハスキーは非常に社交的で、多頭飼いや子どものいる家庭にも適しているという結果が出ている
とよく言われるが、人間の友人グループにもすぐ溶け込んでしまうのだから、たいしたものだと思う。

庭に出ると、ユキは一気に本領を発揮しはじめた。賢司が投げたボールを追いかけ、芝の上を全力で駆け抜ける。爪が土をひっかく音、息を切らせながらも止まらない足音。
シベリアンハスキーは活発で社交的な性格が大きな魅力で、遊び好きで好奇心旺盛な一方、独立心も強く、時にマイペースな行動を見せる。
まさにそのとおりで、ボールを拾ったはいいが、賢司のところへ戻らずに咲子のほうへ走っていってしまった。賢司が「おい、俺が投げたんだけど」と苦笑いしていた。

縁側に戻って、麻衣がアイスコーヒーの入ったグラスをそっと私のそばに置いてくれた。氷がぶつかる涼やかな音と、コーヒーの苦い香り。彼女はそのまま何も言わずにユキを目で追っていた。そのふとした仕草が、長い付き合いの中で育まれた、言葉のいらない優しさのように感じられた。

子どもの頃、実家で柴犬を飼っていた。犬と一緒に遊ぶ時間が、夏休みの一番の楽しみだった。あの頃の記憶と今日の光景が重なって、胸のどこかがじんわりと温かくなる。大人になって、友人たちと一緒に遊ぶ時間がこんなにも貴重なものになるとは、あの頃は思っていなかった。

午後の日差しが少し傾きはじめた頃、ユキが突然、庭の隅に置いてあった私のサンダルをくわえて走り出した。麻衣が「ユキっ!」と叫び、賢司が追いかけ、咲子が笑いをこらえながら動画を撮りはじめた。私は心の中で(それ、今日買ったやつなんだけど)とひっそりつぶやいた。ユキはといえば、得意げな顔で庭の真ん中に仁王立ちしていた。

シベリアンハスキーは透き通るような美しい瞳と凛々しい表情が印象的で、多くの人が犬種名から姿かたちを簡単に思い浮かべられるほど、知名度も人気も高い犬種だ。
けれど、こうして実際にそばにいると、その美しさよりも先に、体温のようなものが伝わってくる。毛並みに触れると、ふわりと柔らかく、それでいて奥には密度のある厚みがある。
被毛は密度の高いダブルコートで、極寒地に適応した構造をしている。
この子が本来いるべき雪原と、今いる夏の庭との距離を、ふと想像した。

夕方近く、みんなで縁側に腰を下ろして、架空のインテリアブランド「ノルディカフォレスト」のカタログを広げながら、いつかハスキーが似合う部屋を作りたいねと笑い合った。ユキはその間ずっと、咲子の膝のあたりにあごを乗せて、うとうとしていた。あれだけ走り回っておいて、もう眠いのか。

ハスキーは家族や他のペットともすぐに打ち解けた、と多くの飼い主が語る。
今日一日を振り返ると、それはたしかだと思う。ユキがいるだけで、空気がほぐれた。笑い声が増えた。友人たちと一緒に遊ぶ時間が、いつもより少しだけ豊かになった気がする。

日が落ちて、麻衣がユキのリードをつけながら、「また来るね」と言った。玄関を出ていくユキが一度だけ振り返った。青みがかった瞳が、夕暮れの光の中でひとつ、きらりと光った。
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