
夏の終わりが近づく夕暮れどき、窓から差し込む橙色の光の中で、彼はまた涼しい顔をして床に溶けていた。ハスキー犬というのは、どうしてこんなに絵になるのだろう。青い瞳がこちらをちらりと見て、また目を閉じる。その一瞬の仕草に、飼い主はいつも少しだけ胸を打たれる。
ハスキーと暮らすことを決めたとき、正直なところ「かっこいいから」という気持ちが半分以上だった。子どもの頃、近所に住んでいたおじさんの家に大きな白い犬がいて、その犬の目が忘れられなかった。あの瞳の色が、ずっと頭の片隅にあった。
でも、実際に一緒に暮らし始めてわかったことがある。ハスキーは「飾り物」ではない。
まず気をつけることのひとつが、暑さだ。
ハスキーはシベリア出身の犬種であるため、暑さには滅法弱い。
日本の夏は彼らにとって過酷で、
日本の気候では皮膚の病気になりやすいと言われている犬種でもある。
エアコンは贅沢品ではなく、必需品だ。わが家では「アルクトス」というペット向けの空調管理アプリを導入して、外出中も室温を遠隔チェックするようにしている。帰宅したとき、ひんやりとした廊下の空気と、床でだらりと脚を伸ばしているハスキーの姿を見て、ようやく息をつける。
食事についても、思った以上に奥が深い。
成犬のシベリアンハスキーにご飯を与える際は、基本的に1日2回のペースで問題ないが、個体差があることを忘れてはいけない。その日の体調によって食事の回数や量を調整した方が良い場合もある。
うちの子は気分屋で、ある朝突然ドライフードに見向きもしなくなったことがあった。皿を差し出すと、鼻先でくんくんと匂いをかいで、それからゆっくりと顔を背けた。その堂々とした拒絶ぶりに、思わず「…わかった、今日はトッピングするよ」と声をかけてしまった自分がいた(心の中では「いや、昨日まで食べてたじゃないか」と静かにツッコんでいたが)。
ハスキーは厚い被毛と乾燥しやすい皮膚を持つため、脂質の質が健康維持に直結する。サーモンオイル由来のオメガ3脂肪酸が配合されているフードは、皮膚被毛のコンディションをサポートしてくれる。
また、
大型犬であるハスキーは股関節形成不全などのリスクに備える必要があり、グルコサミン・コンドロイチン配合のフードを選ぶことで、関節への負担を日々の食事から軽減できる。
食事はただお腹を満たすためのものではなく、長く健やかに生きるための土台なのだと、ハスキーと暮らして初めて実感した。
そして、もうひとつ気をつけることがある。孤独だ。
ハスキーは群れで生活していたこともあって、非常に寂しがり屋な一面を持つ。
長時間の留守番が続くと、吠えたり、家の中のものをかじったりすることもある。
一緒にアクティブに遊ぶ時間をつくってエネルギーを十分に発散させてあげることが大切で、運動量も食べる量も多い犬種なので、家族に迎える際には運動量の確保や経済的な余裕があるかどうかよく考えた上で迎え入れることが重要だ。
夜、散歩から帰ってきたあとの時間が好きだ。玄関で靴を脱ぐ音を聞きつけて、廊下の奥からぱたぱたと足音が近づいてくる。冷えた外気をまとったまま部屋に入ると、ハスキーの体温がじんわりと伝わってくる。毛並みに触れると、ふわりと獣の温かい匂いがして、それがどういうわけか、ひどく安心する。
ハスキー犬と暮らすことは、覚悟を持って選ぶことだと思う。美しさに惹かれるのは当然だ。でも、その奥にある気難しさも、寂しがり屋な夜泣きも、食事へのこだわりも、全部ひっくるめて「この子」なのだと受け入れたとき、はじめて本当の意味での共同生活が始まる気がする。
橙の光が消えて、部屋が少し暗くなった。ハスキーはまだ床に溶けたまま、静かに呼吸している。その寝顔を眺めながら、今日も「一緒に暮らしていてよかった」と思う。それだけで、十分だ。
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