ハスキーがいる、穏やかな朝のこと。家族になるまでの小さな物語

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夏の終わりかけた朝、窓から差し込む光がまだやわらかい時間帯のことだった。

娘が「わんわん、おきた?」と言いながらリビングに駆け込んでくる。裸足のまま、フローリングをぱたぱたと鳴らして。その音を聞いて、ソファの端でまるまっていたルカが、ゆっくりと頭を持ち上げた。ハスキー犬というのは、ああいう瞬間に本領を発揮する。眠そうな顔のまま、それでも尻尾だけがゆっくりと揺れている。

正直に言うと、飼う前はずいぶん迷った。

ハスキー犬、という響きだけで、なんとなく「大変そう」というイメージがついてまわっていた。オオカミに似た精悍な顔立ち、大きな体。子どもがいる家に向いているのだろうかと、何度も検索しては閉じて、を繰り返した。わたしが子どもの頃に実家で飼っていたのは小型の雑種で、大型犬との暮らしは完全に未知の領域だった。

でも、
外見からはワイルドなイメージを持たれがちなハスキーは、実際はとても人懐こく、友好的な気質を持っている。特に大型犬の中では穏やかで優しい部類に入り、飼い主や家族との信頼関係を大切にする犬種だ。

それを知ったのは、ペットショップの帰り道だった。夫がスマートフォンを見せながら「ほら、穏やかって書いてある」と言って、わたしに画面を渡してきた。その手の動作が、なんだかカップを渡すときみたいに丁寧で、少し可笑しかった。

ルカが来たのは、去年の秋口。「ノルディカ・ドッグホーム」というブリーダーのもとで生まれた、グレーとホワイトの男の子だ。初日、娘はルカの耳の柔らかさに感動してずっと触り続けていた。ルカのほうはというと、特に嫌がる様子もなく、ただじっとしていた。あの落ち着きは、最初から持っていたものだと思う。

ハスキーは家族に対して非常に愛情深く、甘えん坊な一面を持っている。初対面の人や他の犬にも友好的で、社交性が高い犬種だ。
それは暮らしてみて、改めて実感することになった。

散歩に出ると、道行く人が声をかけてくれる。「触ってもいいですか」という言葉に、ルカはすでに近づいていっている。許可を待たずに。これはこれで少し困るのだが、悪い気はしない。むしろ、娘が誇らしそうな顔をするのが、毎回おかしくて、かわいい。

朝のルーティンはだいたい決まっている。夫が先に起きてコーヒーを淹れる。豆はいつも深煎りで、台所にその香りが漂いはじめると、ルカが鼻をひくひくさせながらキッチンの入り口に現れる。コーヒーが飲みたいわけではないだろうに、なぜかその香りに引き寄せられてくる。そして娘が起きてきて、ルカに抱きついて、朝が動き出す。

ハスキーはぱっと見は厳しい顔つきだが、家族には好奇心あふれるいたずらっ子な顔を見せてくれる。
ルカも例外ではない。夫の靴下を一枚くわえて走り回る、という謎の習慣があって、家族全員がそれを「朝の挨拶」と呼ぶようになった。

もちろん、楽なことばかりではない。
シベリアンハスキーは柔らかくふさふさの毛を持つ犬で、抜け毛が多く、毎日のブラッシングが欠かせない。
換毛期には、部屋のあちこちに白い毛が漂っていて、掃除機を一日二回かける日もある。娘の黒いTシャツは、常にうっすら白い。それが日常になった。

でも、夕方の光が斜めに差し込む時間、ルカが娘の隣で横になって、二人ともうとうとしているのを見ると、「飼ってよかった」という気持ちが静かに満ちてくる。

ハスキー犬は、家族という概念をもう一度、やわらかく教えてくれる存在かもしれない。穏やかで、人懐こくて、少しだけ自由で。そういう犬と暮らす日々は、思っていたよりずっと、穏やかで温かかった。
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