
五月の午後というのは、どこか油断している。空の青さがまだ少し遠くて、でも日差しはもう夏のふりをしている。そんな午後の二時ごろ、玄関のチャイムが鳴って、友人たちがやってきた。そしてその後ろに、グレーと白の毛並みをまとったシベリアンハスキー犬が、リードを引きながら堂々と立っていた。
名前はソラ。二歳になったばかりの男の子で、
ピンと立った三角の耳と、背中にくるっと巻いたしっぽ
が、なんとも誇らしげだった。
オオカミのような見た目で怖いと感じる人もいるかもしれないが、実際は明るく天真爛漫な性格
で、玄関に入るなり鼻をぐいっと私の膝に押し当ててきた。冷たくて、湿っていて、それがなぜかひどく嬉しかった。
友人の麻衣が「ソラ、ちゃんとご挨拶して」と言いながら、テーブルの上に持参したコーヒーのボトルをそっと置いた。「ノルドブレンド」という架空のブランドの缶コーヒーで、北欧系のパッケージが妙にこの日の空気に合っていた。彼女がそのままソラのリードを私に渡そうとした瞬間、ソラが突然くるりと向きを変えて廊下を駆け出した。麻衣はリードを持ったまま半回転し、「あ、ちょっと」とつぶやきながら引っ張られていった。そのままふたりで廊下をひと往復してから戻ってきた姿に、部屋中が笑った。ソラは何事もなかったような顔をしていた。
縁側に出ると、新緑の匂いが風に乗ってきた。草の青さと、どこかの家の焼き立てのパンの香りが混じっているような、五月にしかない空気。ソラはすぐに庭に降りて、芝生の上をぐるぐると走り始めた。
社交的で他の犬や人ともすぐに打ち解けるため、多頭飼いや家庭での生活に適している
と聞いたことがあったけれど、それは人間に対しても同じらしく、初めて会う友人の子どもたちにもすぐに寄っていって、しっぽを振り続けていた。
一緒に遊ぶといっても、ハスキー犬が相手だと人間のほうが疲れる。フリスビーを投げれば全力で追いかけ、取ってきたと思ったら渡さない。ボールを転がせば三秒で飽きて、今度は別の何かを探しに行く。
好奇心旺盛な一面があり、トレーニングをしているとき、ほかのことに気が向きやすい
という話は本当で、ソラはいつも同時に三つのことに興味を持っているように見えた。
子どもの頃、実家で柴犬を飼っていた。あの子はどちらかというと静かで、縁側で日向ぼっこをしているのが好きだった。ソラを見ていると、犬という生き物の振り幅の広さをあらためて感じる。同じ「犬」という名前がついているのが不思議なくらい、ソラはいつも動いていて、いつも何かを求めていた。
夕方近くになると、日差しが少し傾いて、庭の芝生が金色に染まり始めた。
家で飼い主に見せる甘えた態度と、外ではそっけないツンデレな性格
というのを誰かが教えてくれたが、この日のソラはそのどちらでもなく、ただひたすら純粋に楽しそうだった。友人たちと輪になって座っていると、ソラがその真ん中にぽすんと体を落として横になった。大きな体が芝生に沈んで、目を細めている。
麻衣が「この子、本当に人が好きなんだよね」と言いながら、ソラの耳のあたりをゆっくり撫でた。ソラはそのまま動かなかった。目だけがちらりとこちらを見て、また閉じた。
見た目に反して攻撃性は低く、「見知らぬ人への攻撃性」「見知らぬ犬への攻撃性」がいずれも低い数値
という話を思い出した。確かに、ソラはこの日一度も吠えなかった。遠くで車が通っても、子どもが急に声を上げても、ただ耳をぴくりと動かすだけで、また自分の世界に戻っていった。
ハスキー犬と一緒に遊ぶ午後は、思っていたより静かに終わった。騒がしかったはずなのに、気がつけばみんなが少しゆっくりしていた。ソラがいるだけで、場の空気がどこかやわらかくなる。それは多分、彼が全力で今この瞬間を生きているからだと思う。人間はそれを見て、少しだけ肩の力が抜けるのかもしれない。
友人たちが帰り際、麻衣がソラのリードを持って立ち上がった。ソラは一度だけ振り返って、私を見た。青みがかった瞳が夕日を受けて、不思議な色に光っていた。また来てほしいと思った。いや、また来るだろう。ソラはきっと、この庭の芝生の感触を覚えている。
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