ハスキーと歩く、いい天気の朝――青い瞳が空に溶ける日のこと

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梅雨の晴れ間というのは、なぜああも気持ちがいいのだろう。六月の終わり、雨続きの空がようやく割れて、朝の光がアスファルトにまっすぐ落ちてくる。そんな日の朝七時、リードを手に玄関を開けると、ユキが先に外へ飛び出した。

ユキというのはうちのハスキー犬だ。三歳になったばかりの女の子で、左目がブルー、右目がアンバーのオッドアイをしている。
目の色も印象的で、ブルーやブラウンのほか、左右の色が異なる「オッドアイ」の子もいる。
その個性的な瞳が、今日みたいないい天気の朝にはとくによく映える。光を受けるたびに、色が変わるように見えるのだ。

玄関先に漂う夏草の青い匂い。隣の家のキンモクセイはまだ咲いていないけれど、風が湿った土の香りをわずかに運んでくる。ユキはそれを鼻先でひとしきり吸い込んで、それからぐいっとリードを引いた。行くよ、という合図だ。

散歩のコースはいつも同じ、家の裏手にある「みずほ緑道」という小道を抜けて、川沿いの土手まで歩く約二キロのルート。
シベリアンハスキーは寄り道をあまりせず、サクサクと真っすぐ進んでいくタイプ。
確かにユキもそうで、においに夢中になってうろうろするというより、どこか目的地を知っているかのようにすたすたと歩く。飼い主としては、ついていくのがやっとの日もある。

シベリアンハスキーの運動量は、一般的な大型犬の中でも群を抜いて多く、1日あたり約1〜2時間、約8〜10kmの散歩が理想とされている。
最初にそれを知ったとき、正直なところ「毎日?」と思った。子どものころ実家で飼っていたのはミニチュアダックスで、散歩は一日三十分もあれば十分だった。ハスキーはまるで別の生き物だ。

土手に出ると、風がどっと吹いてきた。ユキの白と黒の毛がふわりとなびく。この換毛期の抜け毛の量は、もはや笑うしかない。先週、玄関に置いておいたスニーカーの中に毛が積もっていたのを発見したときは、さすがに声が出た。ユキは知らん顔で窓の外を見ていた。

土手の上から見下ろすと、川面がきらきらと光っている。六月の朝の光は柔らかくて、空気の温度もまだ涼しい。ユキはふと立ち止まり、耳をぴんと立てて遠くを見た。何かが聞こえたのかもしれない。その横顔が、オオカミみたいで、でもどこか子どもみたいで、わたしはしばらくその場に立ち止まってしまった。

飼い主と一緒に楽しむ散歩は、シベリアンハスキーのストレス解消や健康維持に役立つ。
それはわかっていたけれど、散歩がこんなに自分の気持ちも整えてくれるものだとは、ユキを迎えるまで知らなかった。仕事でうまくいかないことがあった翌朝でも、ユキと歩いていると、なんとなく「まあいいか」という気分になってくる。これは犬の魔法なのか、それとも外の空気の力なのか、たぶん両方だろう。

川沿いのベンチで少し休んだ。ユキは草の上にぺたりと伏せて、前脚を揃えてじっとしている。その姿がなんとも凛々しくて、通りがかったお年寄りが「まあ、きれいな子ね」と声をかけてくれた。ユキは尻尾を二回だけゆっくり振った。愛想がいいのか悪いのか、相変わらずよくわからない。

シベリアンハスキーは天真爛漫な性格ではあるが、常に飼い主と一緒にいたいという犬種ではなく、ある程度の独立心があり、自由に過ごすことを好む。
それがユキのあの落ち着きに表れているのかもしれない。べったりしてこないぶん、ふとした瞬間に寄ってくるときの重みが、妙にうれしかったりする。

帰り道、いい天気の中を歩きながら、今日みたいな朝がもっとあればいいと思った。ユキの足音が土の上でぽすぽすと鳴る。リードを通して伝わってくる小さな振動。青い空と、白い毛と、草の匂い。ハスキー犬と暮らすということは、こういう朝を積み重ねていくことなのだと、なんとなくそう思う。
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