ハスキーがいる、穏やかな朝のこと

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六月の朝、まだ七時になるかならないかの時間帯に、うちのリビングはすでに賑やかだった。白とグレーの毛並みが陽光を受けて輝いて、ソファのへりにあごをのせたまま、ルナはこちらをじっと見ていた。あの目だ。青みがかった瞳で、何かを訴えるわけでもなく、ただただ存在している、あの目。

ハスキー犬を迎えるまで、正直なところ少し怖かった。狼のような顔立ち、大きな体、強そうな印象。わたしの子どもの頃の記憶に、近所の番犬に吠えられて泣いて帰ったことがある。だから大型犬というだけで、どこかに緊張が走っていた。でも今は、そのイメージがいかに的外れだったかがよくわかる。

外見からはワイルドなイメージを持たれがちなシベリアンハスキーだが、実際はとても人懐っこく、友好的な気質を持っている。特に大型犬の中では穏やかで優しい部類に入り、飼い主や家族との信頼関係を大切にする。
これはブリーダーから聞いた話だが、実際に暮らしてみると、その言葉の意味がじわじわと体に沁みてくる。

夫が淹れたコーヒーの香りが台所からただよってくる。豆はいつも近所の「アルタ珈琲店」で買う、深煎りのもの。その香りに誘われるように、ルナがゆっくりと立ち上がり、夫のそばへ歩いていった。夫がマグカップを持ったまま、空いた手でルナの耳の後ろをかく。ルナは目を細めた。その仕草がひどく穏やかで、朝の光の中でしばらく動けなかった。

三歳になる娘の咲が起きてきたのは、その少し後だった。まだ寝癖の残る頭で、よたよたとルナのもとへ向かう。ルナは咲の顔をひとなめして、そのままどしんと横になった。咲が笑いながら毛の中に顔を埋める。ふわふわとした感触と、かすかに温かい体温。ハスキー犬の毛はとにかく柔らかく、子どもが触れると必ずそのまま離れなくなる。

ちょっと強面の見た目に反して、性格はとても友好的かつ利口で、子どもの良き遊び相手になってくれる。
咲とルナのやりとりを見ていると、その言葉が毎朝証明されていく気がする。

ただ、何もかもが最初からうまくいったわけではない。ルナが来た最初の週、わたしはブラッシングのタイミングを完全に間違えた。散歩の直後、興奮冷めやらぬルナに試みたところ、ブラシを持った手をぺろぺろなめられ続けて、結局一向に進まなかった。ブラッシングなのかスキンシップなのかわからないまま三十分が過ぎた。心の中で「これはブラッシングではない」と静かにつっこんだのを覚えている。

家族に対しては愛情深く接するが、見知らぬ人や他の動物とも比較的友好的に過ごせるため、多頭飼いや新しい家族にもなじみやすい犬種だ。
だから、咲が生まれたときも、ルナは自然と受け入れてくれた。新生児の泣き声にも動じず、ただそばにいた。あの静けさは今でも忘れられない。

シベリアン・ハスキーは、そのクールな見た目から「怖い」「威圧的」といったイメージを持たれがちだが、実際にはその見た目に反した陽気でフレンドリーな性格をしている。
飼う前に感じていた不安は、暮らしの中でひとつひとつ、ゆっくりとほどけていった。

六月の朝の光が、リビングの床に細長く伸びている。ルナの白い毛がその光を受けて、少し金色に見えた。咲がルナの背中に手のひらをぺたりとつけたまま、うとうとしはじめている。夫がコーヒーを持ってきて、わたしの隣に座った。何も言わなかった。ただ、三人と一匹で、その朝の静けさの中にいた。

ハスキー犬と暮らすということは、こういう時間を積み重ねていくことなのかもしれない。大きな体と、穏やかな目と、柔らかい毛並みと。家族という言葉の意味が、ルナが来てから少し変わった気がしている。
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