ハスキーがいる、穏やかな朝のこと

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十月の朝は、光がやわらかく斜めに差し込んでくる。カーテンの隙間から入ってきた白い光が、フローリングの上にゆっくりと伸びていて、その端っこに、シロがいた。

シロというのが、うちのハスキー犬だ。正式な名前は「シロ」ではなく、主人がつけた「アルタイル」なのだけれど、娘が生後三ヶ月のころから「シロシロ」と呼び続けたせいで、いつのまにかそっちが定着してしまった。主人は今でも少し不満そうだが、シロ本人は気にしていないらしく、どちらの名前で呼ばれても同じように尻尾を振る。

その朝、わたしはキッチンでコーヒーを淹れていた。豆を挽く音が部屋に広がって、香ばしい匂いが漂いはじめたとき、シロがのそのそとリビングから顔を出した。鼻をひくひくさせながら、コーヒーの香りを確かめるように首を傾ける。犬にコーヒーは関係ないはずなのに、この子はいつもこうして「なんの匂い?」という顔をしてやってくる。

娘はまだ眠っていた。五歳の子どもというのは、平日の朝はなかなか起きないくせに、休日は妙に早起きする。でもこの日は珍しく、七時を過ぎても布団の中にいた。主人はというと、もうジョギングから戻っていて、玄関でスニーカーを脱ぎながらシロに話しかけていた。「今日は風が冷たかったぞ」と。シロはそれを聞いて、ふんふんと鼻を鳴らした。返事をしているみたいで、おかしかった。

シベリアンハスキーは、人にも他の犬にもフレンドリーで、社会性の高い性格だと言われている。
それを知ったのは、シロを迎える前のことだ。正直なところ、あのオオカミのような顔立ちを見て、最初は少し怖いと思っていた。大型犬を飼うのははじめてで、わたしには「難しそう」という先入観があった。

でも、実際に迎えてみると、まったく違った。

ハスキーは基本的に人懐っこく、家族に対してとても愛情深い犬種だ。玄関で帰りを待っていてくれたり、家族がソファでくつろいでいるときにそっと寄り添ってきたりと、愛情表現がとても豊かでもある。
シロもそうだった。わたしが疲れてソファに座ると、どこからともなくやってきて、足元にすとんと腰を下ろす。重たい頭を膝の上に乗せてくる。その重さが、なんだか心地よかった。

飼い主へのアンケートによると、ハスキーを迎えた家庭の約八割が「家族や他のペットともすぐに打ち解けた」と回答しており、子どものいる家庭にも適しているという結果が出ている。
娘とシロの関係も、まさにそれだった。娘が少し乱暴に耳を触っても、シロは怒らない。むしろ嬉しそうに顔を舐め返す。娘が笑い、シロがまた舐める。そのくり返しを、わたしと主人は毎日飽きずに眺めている。

この穏やかさが、うちの日常だ。

ハスキーは、家族と遊ぶのはもちろん、初めて会った人にも尻尾を振る。基本的に優しいから人を噛むことはないし、常に顔を舐めている程度で、家の中では家族の後をずっとついてくることも多い。
シロも、宅配便の人が来るたびにしっぽをぶんぶん振って、相手をびっくりさせている。「番犬にはなりませんね」と主人が苦笑いするのが、うちの定番の光景になった。

家族という言葉の意味が、シロが来てから少し変わった気がする。

以前、わたしの母が遊びに来たとき、「大きい犬は怖い」と言っていた。でもシロがそっと近づいて、母の手に鼻先を押しつけた瞬間、母の表情がふっとほぐれた。「あら、やわらかい」と言って、おそるおそる頭を撫でていた。その手つきが、だんだん大胆になっていくのを、わたしはキッチンから見ていた。コーヒーカップを両手で持って、湯気越しに。

ハスキー犬を飼うことに不安を感じている方に伝えたいのは、体は大きく運動量も必要だが、それ以上に得られるものは計り知れないということだ。人懐こい性格、家族への深い愛情、そして穏やかな存在感は、日々の暮らしに温かさと安らぎをもたらしてくれる。

十月の朝の光は、もう少し伸びていた。シロはフローリングの上で、光の中に顎を乗せて目を細めていた。娘がようやく起き出してきて、眠い目をこすりながらシロの隣にぺたんと座った。シロは顔を上げて、娘の頬をひとなめした。娘が「くすぐったい」と笑った。

この家族の朝が、わたしはたまらなく好きだ。
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