
十月の朝、窓の外がうっすら白んでくる時間帯に、ふと「ハスキー犬って、どんな犬なんだろう」と思ったことがある。きっかけは些細なことで、近所の公園で見かけた一頭のシベリアンハスキーが、飼い主の手をするりとかわして落ち葉の山に突進していく姿だった。飼い主さんは苦笑いしながらリードを引き直していたが、その犬はまったく悪びれる様子もなく、誇らしげに鼻先を地面に押しつけていた。あの自由な背中が、妙に頭から離れなかった。
シベリアンハスキーという名前は、遠吠えの声がしゃがれた「ハスキーボイス」だったことに由来する
という。名前の由来を知ったとき、なんとなく腑に落ちた気がした。あの野性的な遠吠えが、そのまま名前になったのだ。
極寒の地で人と共に働いてきた歴史を持つ中型犬で、高い持久力と独立心を備え、現在でもその作業犬気質が色濃く残っている。
外見の話をすると、まず目を引くのはあの瞳だ。
頭部はV字型で、耳は三角形でピンと立っており、目はアーモンド型で目尻がつり上がり、色はブラウンかブルーで、両目の色が異なることもある。
左右の目の色が違う、いわゆるオッドアイを持つ個体は特に印象的で、初めて見た人は思わず二度見してしまうほどだ。
被毛は厚く寒冷地に適応した設計となっており、グレー、ブラック、レッドや、2つの異なる色が混ざったものも見られる。
その毛並みに触れると、驚くほど密度があって、指がふかふかとした感触の中に沈み込んでいくような感覚がある。子どものころ、祖母の家にいたサモエドに似た感触で、思わず顔を埋めたくなる。
オオカミのような精悍な顔立ちながら、性格は友好的で従順なところが魅力だ。
見た目のワイルドさと内面のギャップ、これがハスキー犬の大きな魅力のひとつかもしれない。
飼い主アンケートによると、ハスキーを迎えた家庭の約8割が「家族や他のペットともすぐに打ち解けた」と回答しており、多頭飼いや子どものいる家庭にも適しているという結果が出ている。
ただし、「飼いやすい犬か」と問われると、少し立ち止まって考えてしまう。
強い独立心が最大の特徴で、人の指示に常に従うタイプではなく、「自分で判断して行動する」傾向がある。
ドッグカフェ「ノルディア・テラス」のスタッフが言っていた言葉が印象的だった。「ハスキーはパートナーとして接しないといけない。命令に従う犬じゃなくて、一緒に考える犬なんです」と。その言葉の意味が、あの公園の一頭を見てようやくわかった気がした。
本能的な問題から、遠吠えや脱走が多い犬種のため、飼い主ときちんとした信頼関係を築くことが大切だ。
遠吠えをした際には気を逸らし、やめたらしっかり褒めること。脱走防止にはこまめな散歩と室内飼いが有効とされている。
毎日、朝晩1時間程度の散歩を欠かさず、ドッグランで思いきり走らせる時間も必要だ。
運動量の多さは、覚悟が要る。
健康面でも知っておきたいことがある。
シベリアンハスキーは丈夫で遺伝疾患が少ない犬種とされているが、白内障や緑内障など目の病気を発症しやすい傾向にある。
また
日本の夏はシベリアンハスキーにとって過酷な季節で、暑い時期は24時間エアコンをつけ、直射日光が当たらない場所をつくることが大切だ。
寒さには驚くほど強いのに、暑さにはとことん弱い。そのアンバランスさもまた、この犬らしいと思う。
最近のSNSやブログを見ていると、ハスキー犬の子犬が「メガネ期」と呼ばれる時期を迎える様子が話題になっている。
シルバーのハスキーが高確率で通る”メガネ期”がしっかり到来して、「かわいい」と「ちょっとおもしろい」の感情が同時にくる
のだという。目の周りの毛色が変わってメガネをかけているように見える、あの独特の顔。思わず笑ってしまうのに、なぜかとても愛おしい。
ハスキー犬とは、どんな犬なのか。その特徴は?と問われたら、こう答えたい。雪と風の中で生まれた自由人で、あなたのことをちゃんと好きだけれど、命令には従わない。一緒に走って、一緒に考えて、初めて心を開いてくれる。そういう犬だと。十月の風が少し冷たくなってきた今日、そんなハスキーと並んで歩いてみたいと、ふと思う。
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