
九月の朝、まだ空気に少しだけ夏の名残が漂うころ、わたしははじめてシロを家に迎えた。シベリアンハスキー犬、生後三ヶ月。段ボール箱の中でまあるく丸まって、こちらを見上げてくる青い瞳に、すっかり心を奪われてしまったのだ。
青く澄んだ瞳や豊かな表情、家族に寄り添うやさしさ──。けれど、そのかわいさだけで迎えてしまうと「思っていたより大変」と感じることもある犬種
だと、後になって痛感することになる。あのとき、もう少しだけ事前に知識を仕入れておけばよかった。これは、そんな後悔から生まれた記録だ。
まず、ハスキー犬と一緒に暮らして最初に驚くのは、その運動量の多さだ。
そり犬だったため運動欲求が強くスタミナがあり、エネルギーが充分に消費されないとストレスをためてしまうことがあるので、毎日、朝晩1時間程度の散歩を欠かさないようにしましょう
、と多くの専門家が口をそろえる。実際、シロの散歩を一度サボったその翌朝、玄関に置いていたお気に入りのスニーカーが片方だけ消えていた。もう片方は、ソファの下で静かに眠っていた(シロ、きみはいったい何がしたかったんだ)。
夏場の散歩は早朝や夕方に行い、常に新鮮な水を用意することが重要
だ。これは特に日本の夏には切実な問題で、
抜け毛の多さや暑さへの弱さも、日本の住環境ではハードルになりやすい要素
のひとつ。わが家では夏になると、エアコンの設定温度を巡って毎晩静かな攻防が繰り広げられる。人間にはやや寒すぎる温度が、シロにはちょうどいい。
食事についても、気をつけることは少なくない。
高品質なドッグフードを選び、必要に応じてサプリメントを取り入れると良いでしょう
。ハスキー犬は活動量が高い分、食事の質とカロリーバランスの管理が重要になってくる。わたしが愛用しているのは「ノルディックグレイン」という北欧産ドッグフードで、シロもよく食べてくれる。ただし食べすぎには注意が必要で、
運動不足になってしまうと、肥満のリスクが高まるだけでなくストレスを感じてしまうので、心身ともに健康によくありません
。食事と運動、このふたつは切っても切れない関係にある。
春と秋には大量に毛が抜ける「換毛期」があり、この時期は毎日のブラッシングがとても大切
だ。初めての換毛期を迎えたとき、わたしは部屋中に漂う白い毛の量に言葉を失った。掃除機をかけるたびにフィルターが詰まり、コーヒーを一口飲もうとしたカップの縁にも、ふわりと一本の毛が乗っていた。それはもはや日常の一部になってしまったけれど。
子どもの頃、実家で柴犬を飼っていたわたしは「犬との暮らしはだいたいわかる」と思い込んでいた。でも、ハスキー犬はまったく別の生き物だった。
「自分で判断して動く犬」としての性質を強く持っている
ため、こちらの思い通りにはなかなか動いてくれない。それが時にはもどかしく、でも時には頼もしく映る。
散歩やご飯の時間だけの限定的なコミュニケーションではなく、普段から一緒にいる時間を増やすことで、愛犬の考えや行動の意味が理解できるようになるでしょう
。これは本当にそうで、シロと毎日を重ねるうちに、彼がドアの前でそっと立ち止まる仕草が「散歩に行きたい」ではなく「ただそこにいたい」という意味だと、少しずつわかるようになってきた。
ハスキー犬と暮らすことは、覚悟と愛情の両方が必要だ。気をつけることは多い。食事の管理、運動の確保、暑さへの配慮、換毛期のケア。でも、夕暮れどきに並んで歩くとき、冷えた空気の中でシロの白い息が宙に溶けていくのを見ると、それだけで全部が報われる気がする。あの青い瞳が、今日もまっすぐにこちらを見ている。
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