
六月の朝は、思ったより早く明るくなる。カーテンの隙間から差し込む光が、フローリングの上にうすく白い帯を引いていた。その光の中に、ぬっと大きな影が割り込んでくる。うちのハスキー犬、シロ——正式な名前はもう少し凝っているのだけれど、家族の誰もがそう呼ぶようになってしまった——が、朝のあいさつをしに来たのだ。
起き上がる前から、すでに顔を舐められている。
ハスキー犬を迎えようと思ったのは、去年の秋のことだった。娘がまだ三歳で、夫は在宅勤務が増えて、家の中に何か温かいものが欲しいと思っていた。ただ、正直なところ不安も大きかった。
体高50〜60センチ、体重20〜27キロという大型犬で、1日2〜3時間の運動が必要
だと知ったとき、「うちで本当に飼えるのか」と夫と顔を見合わせた記憶がある。
クールな見た目から「怖い」「威圧的」といったイメージを持たれがちなシベリアンハスキーだが、実際にはその見た目に反した陽気でフレンドリーな性格をしている。
そのことを知ったのは、ペットショップのガラス越しではなく、知人の家でシロの親戚にあたる犬に会ったときのことだった。子どもが近づいても、吠えるどころか尻尾を大きく振って顔を寄せてきた。娘は最初こそびっくりして私の後ろに隠れたけれど、十分もしないうちにその毛並みに顔をうずめて笑っていた。
あの瞬間、何かが決まった気がした。
ハスキーを迎えた家庭の約8割が「家族や他のペットともすぐに打ち解けた」と回答しており、多頭飼いや子どものいる家庭にも適しているという結果が出ている。
データがそう言っていても、自分の目で見るまでは信じられないものだ。でも、あの日の娘の笑顔は、どんな数字よりも説得力があった。
シロが家に来て最初の週、わたしはひたすら毛と格闘していた。
柔らかくふさふさの毛を持つため、抜け毛が多く、毎日のブラッシングが欠かせない。
覚悟はしていたつもりだったが、リビングに置いたばかりの「ノルディクラフト」というブランドのウールラグが、三日で白いモフモフに覆われたときは少しだけ笑えた。いや、笑えなかった。笑ったのは夫のほうだ。
でも、それ以上のものをシロはくれた。
夕方、娘がうとうとしてソファで眠りかけるとき、シロはいつの間にかそのそばに寄り添っている。大きな体を丸めて、娘の小さな足のそばに頭を置く。その重みが娘には心地いいのか、そのまますうっと深い眠りに落ちていく。
家族に対して非常に愛情深く、甘えん坊な一面を持っている。
本当にそうだと思う。シロは誰かが部屋を出ると、必ずついてくる。トイレにまで来ようとするのには参ったけれど、それも含めて、この犬が家族を求めているのだとわかる。
家族以外の人や犬に対しても積極的に交流しようとする友好的な犬で、明るい性格で好奇心旺盛という性格を持っている。
先日、近所の子どもたちが遊びに来たとき、シロは玄関で全員に挨拶をした。順番に、ひとりずつ。まるで自分がホストであるかのように。
朝の散歩で感じる空気の冷たさも、シロと歩くと少し違う。梅雨前のこの季節、草の青い匂いが鼻の奥まで入ってくる。シロは水たまりをぐるりと避けながら、それでも何かを嗅ぎつけると急に立ち止まる。リードを持つ手に、ぐっと重みがかかる。その感触が、妙に好きだ。
ハスキー犬のいる暮らしは、穏やかだ。騒がしいのに、穏やかだ。娘が笑い、シロが吠え、夫がコーヒーを持ってきてくれる。その温かいマグカップを受け取る瞬間、ああ、家族ってこういうことかもしれないと思う。
飼うことを迷っているあなたへ。不安は消えないかもしれないけれど、あの大きな体に寄り添われた朝の感覚は、きっと何かを変えてくれる。
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