ハスキーと暮らすということ──青い瞳の相棒に教わった、気をつけること

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七月の夕暮れどき、窓の外からアスファルトが冷めていく匂いがふわりと漂ってきた。その瞬間、うちのハスキー犬・シロが鼻をひくつかせて顔を上げる。散歩の時間だと、言葉もなく伝わってくる。

シベリアンハスキーを迎えることを決めたのは、三年前の初夏だった。ペットショップのガラス越しに見た、あの青い瞳が忘れられなかった。オオカミのような凛々しさと、どこか無邪気な表情の同居。
成犬の凛々しさとワイルドさとは対照的に、子犬の頃はモコモコとぬいぐるみのような外見で、その外見と性格のギャップに夢中になる方が多い犬種だ。
わたしもまさにそのひとりだった。

ただ、一緒に暮らし始めてすぐに気づいたことがある。ハスキー犬との生活は、想像よりずっと深く、そして丁寧に向き合わなければならないということを。

まず驚いたのは、暑さへの弱さだった。
ハスキーはシベリア出身だから、暑さには滅法弱い。猛暑が続く夏は、深夜以外はずっとクーラーをつけっぱなしにすることになる。犬は快適、家主は毛布で防寒、なんてことが日常茶飯事だ。
我が家でも、インテリアブランド「ノルテリア」のオーク材ローボードの上に温度計を置いて、室温を常に確認するようになった。夏の散歩は早朝か夜間に限る。
気温が高い日中の散歩は避け、早朝や夜間の涼しい時間帯に行うことが鉄則だ。夏場はアスファルトの熱で肉球を火傷しないよう、クールベストや冷却マットなどを活用することも大切になる。

七月のある朝、まだ空が白みかけた五時半ごろ、シロと一緒に近所の河川敷を歩いた。草の上に夜露が残っていて、シロが前足でそれをぱしゃりと踏むたびに、冷たい水の感触が伝わってくるようだった。耳をぴんと立て、鼻を地面に押しつけながらぐいぐいと引っ張っていく。そのリードを握る手のひらに、朝の涼しい空気がじんわり染みてくる。この時間がいちばん好きだと、いつも思う。

食事についても、最初は戸惑うことが多かった。
成犬のシベリアンハスキーにご飯を与える際は、基本的に1日2回のペースで問題ない。ただし個体差があるため、愛犬の体調や様子をしっかり観察しながら、そのコに合ったペースで柔軟に対応することが大切だ。
シロは食欲にムラがある日があって、最初の頃は心配で何度もフードを入れ替えたりしていた。あとから知ったのだが、
ハスキーのような体の大きな犬は、体重に対して腸の割合が小さいため負担がかかりやすく、毎日の食事の際に腸内環境をサポートする成分を摂取しておくと安心だ。
関節ケアの成分が入ったフードを選ぶようになってから、シロの調子は明らかに安定した。

気をつけることは食事だけではない。
ハスキーは少しの隙間からでも脱走しようとする習性があるため、散歩中はハーネスや首輪のダブルリードを徹底し、万が一リードが外れても大丈夫なように備えることが必要だ。
これは本当に油断できない。一度、玄関のドアをほんの数秒開けた隙に、シロがすり抜けようとしたことがある。あのときの心臓の縮む感覚は、今でも忘れられない。

それから、ハスキー犬は寂しがり屋な一面も持っている。
群れで生活していた習性から、姿が見えなくなるとすぐに鳴くことがある。子供の頃は特に夜泣きも激しく、傍で寝ることもある。
シロも子犬の頃、わたしがトイレに立っただけで小さく鳴いていた。ちなみにあの頃、わたしはトイレにこっそり本を持ち込んでいたのだが、毎回シロの声に呼び戻されて、一度も最後まで読めたためしがない(本人はいたって大真面目に呼んでいたのだけれど)。

ハスキーはとても頭が良い犬種なので、しつけのコツは「一緒に協力しよう」という気持ちで接することだ。命令するのではなく、「これをしてくれると嬉しいな」という気持ちを伝えることで、ハスキーも喜んで応えてくれるようになる。
この言葉は、シロと暮らしながら何度も思い返してきた。強引に従わせようとすると、かえって頑固になる。でも、目を合わせてゆっくり話しかけると、シロはふっと表情を緩めて、こちらに体を寄せてくる。その温かさと重さが、なんとも言えない。

ハスキー犬と一緒に暮らすことは、確かに手間がかかる。温度管理、食事の内容、十分な運動、そして何より向き合う時間。でも、夕暮れの河川敷でシロが耳をぴんと立てて空を見上げる横顔を見るたびに、そのすべてが報われる気がする。青い瞳が夕焼けを映して、少しだけ橙色に染まる瞬間がある。その一瞬のために、今日も一緒に歩いていく。
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