
朝の六時ちょうど、玄関のドアを開けた瞬間に、六月の湿った空気がふわりと顔に当たった。まだ日差しは低く、アスファルトが薄く光を反射している。そんな時間に、わたしのとなりには必ずルーカがいる。グレーとホワイトのダブルコートを持つ、二歳のシベリアンハスキー犬だ。
ハスキー犬を飼い始めたとき、正直なところ散歩がこんなに「事件の連続」になるとは思っていなかった。
ハスキー犬は猟犬やそり犬として活躍してきた歴史から、多くの運動量を必要とする犬種で、散歩は1日に1〜2回、各1〜2時間程度が好ましいとされている。
頭ではわかっていた。でも実際に革のリードを握って外に出てみると、ルーカはまるで世界のすべてが初めて見えるかのように、鼻をひくつかせ、耳をぴんと立て、全身でこの世界を吸い込もうとするのだ。
ハスキー犬は、オオカミのようなワイルドな顔立ちなのに、陽気でフレンドリーで遊び好き。犬も人も大好きで、散歩ですれ違う人や犬にしょっちゅう「遊ぼ!遊ぼ!」と誘いかける。
ルーカもまさにそうで、近所の公園で出会う柴犬のコタローくんを見かけると、もう体ごとそっちに向かってしまう。リードがぴんと張る感覚が、手のひらにずしりと来る。
散歩のコツとして、わたしがいちばん大事にしていることがある。それは「飼い主が焦らないこと」だ。
叱るよりも「褒めて伸ばす」ほうが効果的で、ご褒美や遊びを使った前向きなしつけを心がけることがポイント。
最初のころ、ルーカが急に立ち止まって動かなくなるたびにわたしはリードを引っ張っていた。でもそれは逆効果で、むしろ落ち着いて待ち、彼が自分で歩き出したタイミングで「いいね」と声をかける。それだけで、散歩のリズムがずっとよくなった。
ハスキーは好奇心旺盛で脱走の名人でもあるため、散歩中はハーネスや首輪のダブルリードを徹底し、万が一リードが外れても大丈夫なように備えることが大切だ。
ある梅雨前の朝のこと。近所の「ヒノデ緑道」という遊歩道を歩いていると、草むらのにおいが雨上がりの土と混じって、独特の青くさい香りを放っていた。ルーカはその香りに引き寄せられるように鼻をつけ、しばらく動かなかった。わたしはそのとき、子どものころ祖父の畑で土を触ったときの感触を、なぜかふと思い出していた。冷たくて、少しざらざらしていて、生き物のにおいがした。ルーカが感じているものも、きっとそういうものなのかもしれない。
ハスキー犬は仲間意識が強く、人に寄り添うことを好む反面、寂しがりな一面もある。室内でいつも家族とともに過ごさせることで心が安定し、体調にもいい影響を与える。
散歩はただの運動ではなく、一緒に時間を過ごすことそのものだと、ルーカと歩くようになってから気づいた。
ちなみに、ルーカとの散歩に欠かせないアイテムがある。「ノルドウォーク」というアウトドアブランドのハーネスで、背中のDカンが二か所ついていてダブルリードに対応している。これを装着してから、引っ張りが格段に落ち着いた。散歩のコツを語るなら、道具選びも外せない要素だ。
ハスキー犬は毎日2時間以上の散歩や遊びが必要で、十分な運動や精神的な刺激を与えないとストレスや問題行動につながるケースがある。
だからこそ、散歩は義務ではなく習慣として、できれば楽しい時間として積み上げていくのがいい。
先日、ルーカが散歩の帰り際に突然道路の真ん中でぺたんと座り込んだ。「まだ帰りたくない」という意思表示なのは明らかで、わたしは思わず苦笑いした。
散歩に行きたくてたまらないハスキー犬が、独特の鳴き声で訴えかけたり、飼い主の脚を前足でつっついたりする姿が話題になるほど、ハスキーはお散歩への情熱が人一倍強い。
帰りたくないのはルーカだけじゃないかもしれない、とも思う。——正直、わたしも、もう少しだけこの朝の空気の中にいたかった。
毎日の散歩で出会うハスキーの切なげな表情に「これは通いたくなる」と反響が広がるほど、ハスキー犬は散歩中の存在感が際立っている。
青い瞳で見上げてくるルーカの顔は、何度見ても飽きない。
散歩は、ハスキー犬にとっても、飼い主にとっても、ただ体を動かす時間じゃない。互いの体温を感じながら、朝の匂いを共有して、言葉なしで会話する時間だ。そのコツは、実はシンプルで、「焦らず、褒めて、毎日続ける」こと。それだけで、青い目の相棒はきっと、あなたのことをもっと好きになる。
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