いい天気の朝、ハスキー犬と歩く。それだけで、なんだか特別な一日になった。

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梅雨の合間に、ふいに晴れる日がある。

六月のある朝、目が覚めたら窓の外がやけに明るかった。カーテン越しに差し込む光が、部屋の壁をうっすらとオレンジ色に染めていて、「あ、今日はいい天気だ」と体より先に目が気づいた。時計を見ると、まだ六時を少し過ぎたばかり。普段なら二度寝するところだけれど、その日は違った。

リードを手に取った瞬間、彼女は全身で反応した。

うちのハスキー犬、ノルテは三歳になる雌で、グレーとホワイトの毛並みが朝の光の中でやわらかく輝く。
シベリアンハスキーはちょっと強面の見た目に反して、性格はとても友好的で利口だ。
ノルテもそのとおりで、見知らぬ人にもしっぽを振るし、近所の子どもたちには特に人気がある。でも今この瞬間、彼女の瞳に映っているのは私だけで、その青い目がまっすぐにこちらを見上げていた。なんだか少し、照れくさい。

外に出ると、空気がひんやりとしていた。

六月の朝特有の、湿気を含みながらもどこか澄んでいる感触。アスファルトはまだ夜の冷たさを残していて、ノルテの肉球がその上をリズミカルに叩く音が、静かな住宅街に小気味よく響いた。コツ、コツ、コツ。その音を聞きながら歩いていると、子どものころ、早起きして父と近所の川沿いを歩いた記憶がふと浮かぶ。あのころも、こんなふうに朝の空気は少しだけ特別な匂いがした。草と土と、どこかの家から漂ってくるコーヒーの香り。

シベリアンハスキーは活発な性格で運動量が豊富な犬種であり、散歩は彼らの健康を維持するために重要な役割を果たしている。
だからこそ、ノルテとの散歩は私にとっても義務ではなく、一種の儀式のようなものになっていた。朝の光の中で並んで歩くこと。それだけで、なんとなく今日一日がうまくいく気がする。根拠はないけれど。

いつものコースを少し外れて、「ヒカリ緑道」と呼ばれる遊歩道へ向かった。

地元の人しか知らないような細い道で、両側に紫陽花が咲き乱れている。梅雨の晴れ間に輝くその青と紫の花びらが、朝露をまとってきらきらしていた。ノルテはその花に鼻先を近づけ、くんくんと匂いを嗅いだあと、なぜか一歩引いて首をかしげた。何かが気に入らなかったのか、それとも単純に予想と違う匂いだったのか。その仕草がおかしくて、思わず笑ってしまった。

シベリアンハスキーはもともとソリ犬として活躍していた犬種ということもあり、引っ張るという行為が得意だ。
ノルテも例外ではなく、気になるものを見つけると体ごと突進していく。今朝は遠くに猫の影を見つけた瞬間、リードが一瞬ピンと張って私の肩がグッと引っ張られた。思わず「ちょっと待って」と声に出したけれど、ノルテはそんなこと気にも留めず、鼻をひくひくさせながら前を見つめていた。飼い主の都合など、彼女のスケジュールには一切含まれていないらしい。

緑道を抜けると、小さな公園に出た。

ベンチに座って、少し休んだ。ノルテは私の足元に伏せて、目を細めながら朝の光を浴びていた。風が吹くたびに、彼女の長い毛がふわりと揺れる。その白い毛先が光を受けてほんのり輝いて見えて、なんだかとても綺麗だと思った。ありきたりな感想かもしれないけれど、こういう瞬間は言葉にするより、ただ黙って眺めているほうがいい。

いい天気の朝に、ハスキー犬と散歩をする。

それだけのことなのに、不思議と心が満たされる。ノルテがいなければ、この遊歩道を歩くことも、紫陽花の匂いを嗅ぐことも、朝の光の中に立ち止まることも、きっとなかった。彼女が私の日常を、少しずつ豊かにしてくれている。そのことに、今朝もまた気づかされた。

帰り道、ノルテは少しだけ歩調を緩めた。満足したのかもしれない。その横顔は、どこか誇らしげで、凛としていた。
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