ハスキーと歩く、いい天気の朝――青い瞳が空を映した日のこと

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朝の六時半。空が妙に澄んでいた。梅雨が明けたばかりの七月の朝は、まだ風に少しだけ湿り気が残っていて、それでも光は夏のそれだった。眩しい、というより白い。眩しいとは少し違う、目の奥にじわりと染み込んでくるような明るさ。そういう朝に、うちのハスキー犬・ソルは必ず玄関の前で待っている。

ソルはシベリアンハスキーの三歳の雄で、左目がブルー、右目がアンバーというオッドアイを持っている。
左右の色が異なる「オッドアイ」の子もいて、この個性がハスキーらしさを引き立ててくれる。
そのアンバーの瞳が、朝の光の中でとろりと溶けるように輝く瞬間が、私はどうしても好きだ。

リードをつけた瞬間、ソルの背中がぴんと伸びる。その張り詰め方は、まるで犬ではなくオオカミのそれで、思わず私のほうが姿勢を正してしまう。散歩、と言葉にする前に、もう彼は動き始めている。
気分屋な一面があるので、ルートや距離は自由にさせてあげると喜ぶ。飼い主が散歩に連れていくというよりは、迷子にならないよう付き添っているというような感覚だ。
まさにその通りで、私はいつも「ソルの散歩に同行している人間」という立ち位置でいる。

近所の並木道、通称「カエデ通り」を抜けていく。今の季節、葉が濃い緑に茂って、朝の光を細かく砕いてアスファルトに落としている。足元に光の破片が散らばっているみたいで、ソルはそのひとつひとつを踏みながら進む。鼻をひくつかせ、草の匂いを吸い込み、また歩く。その鼻息の音が、静かな朝の空気の中でやけにはっきり聞こえた。

シベリアンハスキーの運動量は一般的な大型犬の中でも群を抜いて多く、1日あたり約1〜2時間、約8〜10kmの散歩が理想とされている。これはかつて極寒のシベリアでそり犬として何十キロもの距離を走ってきた歴史に由来している。
だからこそ、いい天気の朝に外へ出るとき、ソルの全身から漏れ出すエネルギーには、ただの「嬉しい」以上のものが宿っている気がする。本能が目覚める、とでも言えばいいのか。

子どもの頃、私は犬を怖いと思っていた時期があった。近所に大型犬を飼っている家があって、塀の隙間から顔を出してくる犬に、毎朝びくびくしながら登校していた。あの頃の私が今の自分を見たら、きっと目を丸くするだろう。二十キロ超えの犬のリードを握って、むしろ引っ張られながら笑っているなんて。

飼い主と一緒に楽しむ散歩は、シベリアンハスキーのストレス解消や健康維持に役立つ。運動能力や好みを理解して、最適な散歩環境を提供することが大切だ。
とはいえ、「最適な環境」なんて大げさなことは考えていない。ただ、ソルが喜ぶ道を選ぶ。草の多い道、風の通る道、他の犬の匂いが残っている道。それだけのことだ。

今日はいい天気だった。本当に、どこまでも晴れていた。公園の入り口に差し掛かったとき、ソルが急に立ち止まった。何かを見つけたのか、耳をぴんと立てて、遠くの方を凝視している。私も同じ方向を見たが、何もいない。鳩が一羽、のんびり歩いているだけだ。ソルよ、そんなに真剣な顔をしなくていい。心の中でそっとツッコんだ。

公園の中に入ると、ベンチに老夫婦が座っていた。ソルを見て、奥さんの方が「まあ、きれいな子ね」と声をかけてくれた。
シベリアンハスキーは見た目に反して性格は優しくて友好的で、大変賢く、飼い主に対して愛情深いので、素晴らしいパートナーになってくれる。
ソルはその奥さんの前でちょこんと座り、尻尾をゆっくり振った。いつもより上品な振る舞いに、私のほうが少し照れてしまった。

帰り道、カエデ通りをまた歩く。朝よりも光が強くなって、木漏れ日が揺れている。ソルの白と黒の毛並みに、その光が縞模様をつくる。風が吹くたびに模様が動いて、まるで生き物みたいだった。

散歩を終えて玄関に入ると、ソルは水を飲んで、すぐに床に伸びた。満足したのだろう。その横顔に、今朝の光の残像が重なって見えた。ハスキー犬と歩く朝は、いつもこんなふうに、静かに終わる。
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